米原主任はわたしの隣に戻って来て腰を下ろすと、腕を組んでグラウンド全体を見渡した。
「始まるんですね。」
わたしがそう言うと、米原主任は「うん、まぁ、今日の相手は格下の相手だから大丈夫だろうが、油断は出来ないな。」と言い、それから「今グラウンドで自分のポジションに付いてるのが、うちのスタメンだ。」と言った。
「前にいる二人がトップの背番号7の米原航と、トップ下で背番号5番の水神だ。まぁ、FW(フォワード)だな。」
「え、米原航?同じ苗字ってことは、、、」
「あぁ、16下の俺の弟だ。」
「そんな年の差のある弟さんがいらっしゃったんですね。」
「まぁな。それから二列目。真ん中にいるのがボランチのさっき言ったキャプテンの健琉と、背番号8番の莉乃だ。健琉はチーム全体を見ながら的確な指示が出来るし、どのポジションも任せられる信頼できるキャプテンだ。莉乃は、技術はあるんだが、少し遠慮がちなところがネックかな。」
そう説明してくれる米原主任に、わたしは「ボランチ?って何ですか?」と訊いた。
「あぁ。ボランチは大事なポジションなんだ。人間の身体で例えるなら、心臓部分ってとこかな。」
「ほぉ、、、なるほど。」
「右サイドハーフは、背番号11番の後藤。サッカー未経験者だが、運動神経抜群で何でもこなせるタイプ。左サイドハーフはスタメン唯一の一年生、背番号12番の高橋。高橋は小学生のときにサッカーチームに入ってたらしくて、技術もあるし、一年生の割に冷静で体力もあるし、何より足が速い。この四人がMF(ミッドフィルダー)だ。」
そう話す米原主任はいつものクールな米原主任とは違い、イキイキしていて、本当にサッカーが好きなんだなぁということが伝わっているくるのと共に、子どもたちのことも一人一人よく見ているんだなぁと思った。
「それから、一番後ろ。真ん中のポジションにいるのが、センターバックの背番号9番の啓士。啓士は身体を張ってでも守備をする、次期キャプテンだ。もう一人のセンターバックは背番号6番の宮木。センターバッグは啓士と宮木に任せておけば安心ってくらいのチームプレイを見せてくれる。」
「さっき、相手チームの8番?でしたっけ。宮木くんにマークするように指示してましたよね?」
「あぁ、宮木は足の速さもあるしフィジカルもあるから任せてみた。」
何だがサッカーって、思ってたよりも奥深いんだなぁ。
サッカーって全然興味なかったけど、話し聞いていて少し興味が出てきた自分がいた。



