そして、それから数ヶ月が経ち、ついに結婚を申し込まれてしまった。
あれから何度断っても勇者様は諦めてくれない。それどころかどんどん大胆な行動をするようになっている。
そのせいで、ついに村の中で私たちの関係を噂されるようになってしまった。
このままではまずい。
狭い村なのだ、変な噂が回って住みにくくなる前になんとかしなければ……!
そう頭では考えるのに、私は勇者様の来店を拒めずにいた。貴重な売り上げだというのももちろんだが、単純に怖いのだ。彼のチートスキルが。
なので、なるべく穏便に事を済ませたい。どうにかして諦めてくれないかな…? 主人公なのだからヒロインと結ばれて欲しい。
毎日毎日、勇者様のことで頭を悩ませている私をよそに今日は一段と浮かれた様子で、彼は店へとやってきた。
「あのー、勇者様? これは一体?」
いつものように無駄話に付き合わされていれば、突然、目の前に小さな箱を差し出された。
何が入っているのか見当がつかず、首を傾げていれば、勇者様がゆっくりとその箱を開けた。
「求婚といったら指輪かなって……なかなか素材が集まらなくて遅くなったけど、ようやく完成したんだ」
そう言って勇者様が箱を開ければ、中にはキラキラと黄金の指輪が入っていた。中心には大きなダイヤが飾られている。
鑑定スキルなどない素人の私でもわかる。この指輪は絶対レアアイテムだ。
これは絶対にモブが身につけるものじゃない。断ろうと手を差し出せば、勇者様にその手を握られてしまった。
「ほら、ぴったりだ」
驚くような速さで私の指に指輪をはめた勇者様が嬉しそうに笑う。


