その後、やはりこの店に勇者一行が現れることはなかった。そろそろ店仕舞いの時間だという店主の言葉で、私は表の看板を直そうと外に出た。


 すると、扉を開けようとした瞬間に扉が開いて、バランスを崩した私はそのまま誰かにぶつかってしまった。


「──わっ、」
「ああ、ごめんね。大丈夫?」


 頭上から聞こえる優しそうな声に顔を上げれば、とんでもない美青年が立っていた。


 あれ、この顔、もしかして──。


「……勇者様?!」


 店主の驚いた声に、私は急いで勇者様から離れる。すると、ぞろぞろとヒロインと魔法使い……と、勇者一行が店へと入ってくる。


 まじで来たよ勇者一行。どうやら店主の祈りが神に届いたようだ。


「勇者一行が来てくれるなんて、今日はお祝いだな」


 浮かれる店主をよそに、私はとても居心地が悪い。 なぜなら、先ほど思い切り勇者様にぶつかってしまったからだ、処刑とかされないよね?


 恐る恐る勇者様の方を見れば、ばっちりと目が合ってしまった。気まずさから笑みを浮かべていれば、勇者様もにっこりと微笑んでくれた。


 ………よし、大丈夫そうだな。私はほっと胸を撫で下ろした。