「えっと、その…?」
「そっか、そうだよね。いきなりで驚くよね」
「え? ああ、まあ…」
「じゃあ、これから俺のことを好きになってもらえるように頑張るね」


 ──は? いまなんて言った、この勇者様。
 困惑を隠しきれない私をよそに勇者様はどこか楽しそうだ。


 それはそれは鼻歌まで歌い出しそうなぐらいに。


「あの、勇者様…?」
「今は無理でも、後から気持ちが変わることってあるでしょ? 大丈夫、俺、待つのは得意だから」

私の話などまるで聞いておらず、ひとりで勝手に話を進める勇者様。

 そして、そのまま「一日でも早く俺のことを好きになってもらえるように頑張るね」なんて言いながら勇者様は私の手の甲にキスを落とした。


「ぜったいに諦めないから覚悟してね」


 ──お願いだから、誰か嘘だといって。