世界を救う予定の勇者様がモブの私に執着してくる



「……気持ちは嬉しいのですが、私と勇者様では釣り合いませんし、それに」
「関係ないよ」

 まだ話してる途中だったのだけど、食い気味に遮られてしまった。お願いだから、最後まで聞いてくれるかな?


 わざとらしく咳払いをして、私はもう一度勇者様に拒絶の意思を伝えようと言葉を続ける。


「気持ちはありがたいのですが、私は」
「嬉しい、ありがたい、ってことは、前向きに考えてくれてるってこと?」


 またしても話の途中で遮られてしまい、思わず顔が引き攣る。だめだ、この男に遠回しに伝えようとしたのが間違いだった。


 売り上げのことはもうこの際忘れて、はっきりと断らせてもらおう。


「無理です、勇者様とは結婚できません」


 店主への申し訳なさに最後の方は少しだけ声が小さくなってしまったが、何とか言葉にはできた。これで私の気持ちは伝わったはずだ。


 恐る恐る勇者様の様子を伺えば、彼はなぜか笑みを浮かべていた。