翌朝、魔王の首を持って現れた勇者様に私は色んな意味で悲鳴を上げることとなった。ちなみに魔王は素手で倒したらしい。何だそれ、魔王より化け物じゃないか。
「幸せになろうね、イリア」
恍惚とした表情で私の指輪にキスを落とす勇者様。今からでも逃げ出せる方法があるのなら、誰か教えて欲しい。しかし、そんな私の心情を悟ってか、勇者様は痛いほどの力で私を抱きしめた。
「……イリアが俺から逃げ出したら、世界を滅ぼしちゃうかも。それぐらい君のことが好きなんだ」
なんと、最低最悪の告白だろうか。そんなことを言われてしまえば、逃げられないじゃないか。
こうして、非常に不本意ではあるが、私は世界を救った勇者様の花嫁となったのだった。
「さあ、イリア。誓いのキスをしよう」
「あ、ちょっと近寄らないでくだ──んっ?!」
言い終わる前に口を塞がれてしまった。
こうして、私のファーストキスもあっさりと奪われてしまったのだった。
この男、舌まで入れやがった……! 涙目で睨んでいれば、彼はくすくすと楽しそうに笑った。
「世界で一番幸せにするよ」
そう言った彼の顔があまりにも幸せそうだったから、まあこれはこれでいいかと思ってしまった。
めでたし、めでたし。


