「ああ、イリア。君の可愛さの前では、このプレゼントも霞んでしまうよ」


 歯の浮くような台詞を吐きながら差し出されたのは、キラキラと光る宝石たちだ。
 この世界の希少アイテムをこうも簡単に差し出すことができるのは、彼がこの世界を救う予定の勇者様だからだろう。


 差し出された宝石たちはやんわりと拒絶しながら、私は愛想笑いを浮かべながらお決まりの台詞を口にする。


「こんにちは、勇者様。今日は一体どのような武器をお探しで?」
「あ、別に武器はいらないのだけど」


 ──じゃあ、帰れ!
 思わずそう口に出そうになったが、相手は仮にも世界を救う予定の勇者様だ。下手なことを言って、処刑なんてされたらたまったものじゃない。


 喉にグッと力を込めて、私は何とか耐える。


「では、防具でしょうか? それともポーション?」
「どれも違うくて…」


 ──違うのかよ!
 ズラリと並べたアイテムたちには目もくれず、勇者様は何かを言いたそうにこちらを見つめてくる。