隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 週末、晃太は疲れ切った状態で迎えにきた磯山の車に乗り込んだ。見るからに疲労困憊の晃太をあかねは心配したが、撮影は滞りなく進んだ。

「姉ちゃん、今日はもう終わりだよね。」
「良くやったわね。早く帰って寝なさい。」

 晃太はテキパキと着替えて控え室を出たが磯山がいない。晃太は磯山の居場所を聞こうとあかねの控え室へ向かった。

「ちょっと、お父さん!」

 あかねの控え室から出てきた父と対面した晃太は、体をこわばらせた。

「お父さん、晃太は少し休ませてあげて。今日だって無理してやってるのよ?」
「少しは水伊勢に貢献したらどうだ?」

 父の低い声は、晃太の上に重くのしかかった。

「晃太にそんなこと求めないで。」
「このまま続けてもらう。いいな。」

 父は吐き捨てるように言って立ち去った。

「晃太、お父さんの言うことなんて聞く必要ない。これ以上やったら体が壊れちゃうわ。」

 晃太は顔を上げることができなかった。

「磯山さん、晃太をお願い。」
「承知致しました。」

 磯山は固まって動けなくなってしまった晃太を支えるようにして車へ連れて行った。磯山の車に乗り込んだ晃太は、意識を失うように眠りについた。