隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 すっかり回復した私は、朝早くに目覚めてずっとドキドキしていた。今日は撮影の初日。どんな撮影をしているのかと考えているだけで、午前中が終わってしまった。そして、居ても立っても居られなくなった私はメッセージを送ってしまった。

『お疲れ様です!撮影どうでしたか?』

 どんな服を着たのか、どんなシチュエーションなのか、相手はいるのか、女性のモデルとは話したのか。聞きたいことが多すぎるがそんなことを盛り込む勇気はなく、挨拶まがいの軽い文章になった。短い文章だが、数時間悩みに悩んだ結果の文章だ。待受の犬をぼーっと見ていると返信が来た。

「早っ!」

『撮影終わったよ。具合は大丈夫?』
『良くなりましたよ!終わるの早いんですね。』
『今日はデートの服だったからすぐ終わった。すごく海が見える綺麗な場所だったよ。今度一緒に行こうね!』

「海が見える場所でデート……」

(あの佐藤さんが海デートなんて最高のシチュエーションだ。誰とデートしたのだろうか、相手のモデルは誰なのだろうか。知ってるモデル?知らないモデル?気になる!)

 私はスマホを握りしめた。撮影についてもっと詳しく知りたい、あわよくばどんな写真を撮ったのか見せてもらいたい。

『どんな写真を撮ったんですか?』

(送ってしまったぁ!何かクッションを挟んでから言うべきなのに、唐突に写真を要求するような文章を送ってしまったぁ!)

 でも考えてみれば公式に発表される前に写真が外へ出ることはない。プロが撮影している時にスマホでパシャパシャ撮れるわけでもないし、今日撮影した物を今日見ることはできない。前のめりな自分が恥ずかしくなった。しかし──

『姉ちゃんが撮ってくれたやつ送るね。』

 すぐに返信が来て、そこには写真が添付されていた。メッセージを開いた私は思わずベッドにスマホを放り投げた。なんという写真だ。今日佐藤さんが着ているのはサンチェス=ドマーニではない。シンプルでさわやかなクロードの服だ。

「もうなんなの……!」

 私は膝を抱えて丸くなった。