隣の部署の佐藤さんには秘密がある

「磯山さん、じぃちゃんの具合はどう?」
「ずいぶん回復されましたよ。お話ができるようになりました。御面会はもう少しお待ちください。」
「うん。」

 周囲の厳しい目に耐えるしかなかった晃太に唯一優しい言葉をかけてくれたのが祖父だった。勉強ができずに落ち込んでいたとき、祖父だけは「晃太はそのままでいい」と言ってくれた。出来損ない、水伊勢には不要といった陰口が聞こえてきて苦しんでる時は「言わせておけばいい」と優しく声をかけてくれた。

 何よりも仕事を優先していた祖父は、昼夜問わずに仕事をしていたから祖母も両親も大変そうだったが、晃太には祖父の姿はカッコよかった。祖父のようになりたいと思ったことはあるが、それができたのは父であり、兄だった。祖父は自分には到底辿り着くことのできない場所にいる。

 でもサンチェス=ドマーニのファッションショーに出ることができれば、祖父の力になれるかもしれない。晃太はあかねから送られてきた大量の写真の中から、数枚選んで祖父に送った。今はまだサンチェス=ドマーニではないけれど、モデルをしている自分を祖父に見てもらいたい。すると、スマホが震えてポップアップが表示された。

「わぁっ!」
「どうされました!?」
「ごめん、なんでもない……」

 思いがけず大きな声が出てしまった。さきから連絡だ。晃太はドキドキしながらタップした。