隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 撮影のテーマは『はじめての海デート』。海が見える公園を晃太と架空の彼女がデートしてるシチュエーションだ。

(ここでさきが俺の方を振り返って……あぁ、絶対可愛い!ぜーったい可愛い!)

 さきとデートしてることをリアルに妄想しながら撮影に挑む晃太は凶器だった。現場にいた女性陣が残らず骨抜きにされ、あかねは大笑いした。プロのモデルであるあかねと、新人だが可能性が無限大の晃太の撮影は、あっという間に終了した。

「すごいじゃない、晃太!こんなに早く終わるとは思わなかったわ!」
「え?もう終わり?今日のテーマは得意かも。もっとやっても良かったな。」
「初回撮影の記念にたくさん撮っておいたから、彼女へ送ってあげなさい。」

 あかねは晃太のスマホへ大量の写真を送りつけた。

「こんなにいらないよ。」
「彼女のためよ。モデルやるって言ってないの?」
「言ったけど、彼女は顔出してる俺のことあんまり好きじゃないから……」
「彼女が苦手なのは、サンチェス=ドマーニでバチバチに決めたチャラい晃太でしょ?これは大丈夫よ。」

 晃太はまたちょっとだけ傷ついた。

「でもこんなにたくさんは……」
「じゃぁ……これ。これは絶対に送りなさい。何がなんでも送りなさい。」

「これ?よりによってなんでこれなんだよ……」
「彼女にはこれがいいの。姉に言われたから仕方なく送りましたって言って送りなさい。」

「なんでそんなに勧めるんだよ。」
「よく撮れてるし、これは言わば非売品よ?もしかしたら待受にしてくれるかも。」

 晃太はさきが犬の写真を待受にしていることを思い出した。犬の写真よりは自分の写真を待受にして欲しい。晃太はあかねがゴリ押ししてきた写真を保存した。

 撮影を終えた晃太は、磯山が運転する車に乗り込んだ。