隣の部署の佐藤さんには秘密がある

　さきを駅まで送った佐藤は、会社へ戻っていた。

「本城さん、戻りました。ありがとうございました。」
「佐藤、すまん。これ頼む。」
「はい。」

　上司の本城から書類を受け取り、書類に目を通してパソコンに向き合った。早く終わらせないと帰れないが、頭の中はさきのことでいっぱいだ。

（宮島さんもサンチェス＝ドマーニが好きだったなんて知らなかった！これは運命だ！）

　今日はサンチェス＝ドマーニの新作発売日。一時的に外出を許可してもらって急いで新作を買いに行ったらさきがいた。ペンダントだけじゃなくて、新作のワンピースも一緒に買ってあげればよかった。あの状況で買ってくれと言われなかったのは初めてだ。

（やっぱり宮島さんは俺の理想の人だ……）

　今朝ポストにレセプションのチケットが届いているのを見つけてそのままカバンに入れていたが、それはさきに渡すためだったのかもしれない。確実に1歩ずつ進めてきたが、追い風が吹いてきたように思える。

（レセプションで会えば絶対に落とせる。宮島さんを絶対に俺の彼女にするっ！楽しみだなぁ。がんばるぞー！）

　佐藤はキーボードを打ちはじめた。

「佐藤さん、大丈夫かな。」
「どうなってんだよ……」

　尋常ではない速さでキーボードを打ち続ける佐藤の姿を、同僚たちは心配そうに見守っていた。