隣の部署の佐藤さんには秘密がある

「普段使いならこちらはいかがですか?」

 これなら会社の佐藤さんでも着けられそう。でも、問題は価格だ。

「これは新作なんですよね?」
「今季はネクタイがたくさん出たので、種類も価格も様々ございます。価格はこちらです。いかがですか?」
「おっ!」

 まさかの予算内だ。サンチェス=ドマーニの新作の中に、こんなにお手頃の物があるとは知らなかった。

「いつもお色味がはっきりした物をお買い求めになりますので、こちらはお持ちではないと思います。こちらでよろしいですか?」
「はい……お願いします……」
「お包みいたしますね。」

 三上さんはにっこりと微笑んでレジへ向かった。三上さんは私が誰のために選んでいるのかわかっているのではないだろうか。思えば、ペンダントを買ってもらったとき、会計をしてくれたのは三上さんだった。恥ずかしい!めちゃくちゃ恥ずかしい!

「包装はこのようにしてみましたが、いかがですか?」

 ネクタイの箱はTHEブランド品といった仰々しい感じだったが、ものすごくシンプルで目立たない包装にしてくれている。

「大丈夫です!ありがとうございます!」

 会計を済ませてショップバッグを受け取ると、私は達成感で満たされた。サンチェス=ドマーニを買う時はいつも気持ちが高まるが、贈り物を買うというのはまた別の意味で気持ちが高揚するようだ。

 三上さんは、贈り物をする相手が佐藤さんであることを察して、会社の佐藤さんにピッタリなネクタイを選んでくれた。その上、会社で渡しても目立たないように小さく包装してくれたのだ。

「三上さんは神だ。間違いない。」

 私は心の中で三上さん……いや三上様に手を合わせた。