隣の部署の佐藤さんには秘密がある

「ひぃっ!」

 翌朝、目を開けた晃太は小さく叫び声を上げた。バスローブ姿の健斗がじっとこちらを見ていた。

「なんだよ。」
「だってそんな恰好してるから。」

「風呂借りた。大丈夫か?あんなに飲んだの久しぶりだろ。」
「あぁ……大丈夫じゃないかも。こんなにしんどいのは久しぶりだよ。」

 ひたすら飲み続けて、いつ眠ったのか記憶がない。頭が痛くて気持ち悪い。

「今日は早く帰って明日に備えろよ?彼女に謝るのに酒臭かったらそれこそ終わりだ。」
「そうだね。香水かけまくるよ。さきも好きだって言ってたし。」
「そうじゃねぇよ。急に香水臭くなったら余計嫌われる。会社のお前に香水は似合わない。」

「明日までに酒抜けるかな。」
「今から飲まなきゃ何とかなるだろ。」
「気持ち的には飲みたいけどね……」

 昨夜は飲んでも飲んでも足りなかった。健斗がいなかったら、今頃どうなっていたかわからない。

「ありがとう、健斗。」
「正夢にならないように頑張れよ。」
「うん……」

 まだ諦めたくない。信頼を回復するためにできる限りやるしかない。真剣に考えていると、健斗が笑いながら擦り寄ってきた。

「晃太ぁ〜♡まだ時間あるよ?もうちょっと寝よ♡」

 健斗がいてくれて助かったのは事実だが、本当なら隣にいたのは健斗ではなくて宮島さん(本命の彼女)だったはずなのだ。

「宮島さんと目覚める予定だったのに!」
「ははは、ざまーみろ!」
「あー、もう!」

 晃太はニヤニヤしている健斗に向かって、力いっぱい枕を投げつけた。