隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 健斗はため息をついた。佐藤から何度も着信がある。忙しいため無視していたが着信は鳴り止まない。仕方なく休憩室に入って電話を取った。

「晃太、今は忙し……」
「健斗……どうしたらいいの?もうだめなのかな……」

 晃太の声は今にも消えてしまいそうだ。

「話なら聞くから店に来い。電話は無理だ。」
「わかった。すぐ行く。」

「待て。シャワーを浴びて着替えて来からにしろ。サンチェス=ドマーニで来るな。」
「わかった。」

 彼女に振られたであろうことは容易に想像できた。晃太にとって失恋は初めての経験であり、未知の感覚のはずだ。健斗はため息をつきながらウイスキーの準備を始めた。