「なんかお腹空いちゃいました。誰かさんのせいで食事を食べ損ねましたし。」
ちょっと嫌味かなと思って佐藤さんの顔色を窺うと──
「じゃ、食事しよう。部屋とってるから行こう。ルームサービス頼んであげる。」
佐藤さんはさも当たり前のように言い放ち、私の手をやんわり握って立ち上がった。私の方を向いてにこりと微笑むと、佐藤さんはそのまま歩き出してしまう。
「いやいやいやいや。待ってください、佐藤さん!」
「どうしたの?」
「展開が早すぎて、ついていけません。」
「お腹空いたんでしょ?」
「そうですけど、ルームサービスってどういうことですか?」
「この格好で外へ行くのは大変だよね?サンチェス=ドマーニの新作が汚れちゃってもいいの?」
それはそうだ。サンチェス=ドマーニを汚すなんてことはあってはならない。だからって……
「だから部屋に行こう?」
佐藤さんは再び歩き始めた。このままでは連れて行かれてしまう。あまりにも自然過ぎて行った方がいいのかと思ってしまうが、そんなはずはない。
「佐藤さん、部屋へ行くというのは……」
「宮島さん?」
佐藤さんは突然立ち止まった。ようやく気付いてくれたのかと思ったのだけれど──
「部屋に行けば2人きりだ。宮島さんに俺の本気を見せてあげるよ。」
「部屋には行きませんよ。遊びは嫌だって言ったじゃないですか。」
「仕方ないな。じゃあ、今ここで……」
佐藤さんの雰囲気が突然変わって思わず後ずさりした。全身から警報が鳴り響いているが、すぐそこは壁だった。モテ男というものは、計算したかのように壁ドンができるらしい。
「ちゃんと俺を見て?」
佐藤さんは私の顎をすくい上げた。まずいまずい絶対まずい。このままじゃ流されてしまう。
「さき、部屋行こう?……ね?」
私はぐっと目を瞑ってからカッと目を見開いた。そして力いっぱい佐藤さんの体を押して、壁ドンを潜り抜けるとエレベーターへ向かった。そして運よく到着したエレベーターに乗り込むと、1階のボタンを連打した。
(なんなのよ今のは!)
まるで催眠術だ。危うく頷いてしまうところだった。エレベーターが1階に着くと、私はホテルのロビーを駆け抜けて、風のようにアパートへ戻った。
「帰って来られ……た……」
もはやどうやって帰ってきたのかわからないほど、頭の中が朦朧としている。いまだに佐藤さんの色気のある姿と声が頭の中から離れない。レセプションで女性たちが同じことを言っていた理由がわかる気がした。
会社の佐藤さんは好きだけど、佐藤さんの本性があれなら期間限定でも「彼女」は断った方が良いのかもしれない。あんなに顔面が良くて色気のある彼氏なんて、私の身の丈に合わない。
体はだるいけれど、サンチェス=ドマーニのワンピースが汚れては困る。なんとか体を起こして着替えると、どすんとベッドに横たわった。レセプションはすごく楽しかった。でも色々ありすぎた。私はいつの間にか眠りに落ちていた。
ちょっと嫌味かなと思って佐藤さんの顔色を窺うと──
「じゃ、食事しよう。部屋とってるから行こう。ルームサービス頼んであげる。」
佐藤さんはさも当たり前のように言い放ち、私の手をやんわり握って立ち上がった。私の方を向いてにこりと微笑むと、佐藤さんはそのまま歩き出してしまう。
「いやいやいやいや。待ってください、佐藤さん!」
「どうしたの?」
「展開が早すぎて、ついていけません。」
「お腹空いたんでしょ?」
「そうですけど、ルームサービスってどういうことですか?」
「この格好で外へ行くのは大変だよね?サンチェス=ドマーニの新作が汚れちゃってもいいの?」
それはそうだ。サンチェス=ドマーニを汚すなんてことはあってはならない。だからって……
「だから部屋に行こう?」
佐藤さんは再び歩き始めた。このままでは連れて行かれてしまう。あまりにも自然過ぎて行った方がいいのかと思ってしまうが、そんなはずはない。
「佐藤さん、部屋へ行くというのは……」
「宮島さん?」
佐藤さんは突然立ち止まった。ようやく気付いてくれたのかと思ったのだけれど──
「部屋に行けば2人きりだ。宮島さんに俺の本気を見せてあげるよ。」
「部屋には行きませんよ。遊びは嫌だって言ったじゃないですか。」
「仕方ないな。じゃあ、今ここで……」
佐藤さんの雰囲気が突然変わって思わず後ずさりした。全身から警報が鳴り響いているが、すぐそこは壁だった。モテ男というものは、計算したかのように壁ドンができるらしい。
「ちゃんと俺を見て?」
佐藤さんは私の顎をすくい上げた。まずいまずい絶対まずい。このままじゃ流されてしまう。
「さき、部屋行こう?……ね?」
私はぐっと目を瞑ってからカッと目を見開いた。そして力いっぱい佐藤さんの体を押して、壁ドンを潜り抜けるとエレベーターへ向かった。そして運よく到着したエレベーターに乗り込むと、1階のボタンを連打した。
(なんなのよ今のは!)
まるで催眠術だ。危うく頷いてしまうところだった。エレベーターが1階に着くと、私はホテルのロビーを駆け抜けて、風のようにアパートへ戻った。
「帰って来られ……た……」
もはやどうやって帰ってきたのかわからないほど、頭の中が朦朧としている。いまだに佐藤さんの色気のある姿と声が頭の中から離れない。レセプションで女性たちが同じことを言っていた理由がわかる気がした。
会社の佐藤さんは好きだけど、佐藤さんの本性があれなら期間限定でも「彼女」は断った方が良いのかもしれない。あんなに顔面が良くて色気のある彼氏なんて、私の身の丈に合わない。
体はだるいけれど、サンチェス=ドマーニのワンピースが汚れては困る。なんとか体を起こして着替えると、どすんとベッドに横たわった。レセプションはすごく楽しかった。でも色々ありすぎた。私はいつの間にか眠りに落ちていた。



