佐藤さんに連れて来られたのは展望フロアだった。天井までガラス張りで一面に夜景が広がっている。まるで夜景の中に飛び込んだような光景に目を奪われた。
「レセプションの時間は空いてるんだ。」
フロアの奥にはソファーが並んでいる。デートスポットに最適だが今は人がいない。私は佐藤さんと並んでソファーに腰を下ろした。
「ごめんね、本当に。最後の人……あの人につきまとわれて困っててさ……ようやく解放されたと思ったら油断した。そうだよね……名前聞いてないのに、名前呼んだら不審だよね。」
「サンチェス=ドマーニを着るとこんなに変わるんですね。」
完全に別人だ。
「レセプションの時はいつもこうなんだ。1人で行くって言ったのはそれが理由。最初は宮島さんを驚かせようと思ってたんだ。だけど、それだとナンパだと思われて終わりだって友達に言われて、別人の設定でいくことにした。」
確かに突然佐藤さんだと言われても信じられなかったかもしれない。佐藤さんの友達のアドバイスは妥当だ。
「Citrus D’amourで気づけばよかったです。」
「会社でつけてるの知ってるの?」
「え、あぁ……まぁ、たまたまショップで試したばかりだったので……」
「ふーん。なんか嬉しいかも。甘い香りは苦手で香水だけは買ったことがなかったんだけど、この香水はいいよね。」
「私もCitrus D’amourの香りが一番好きです。」
「ファッションショー見てて思ったけど、宮島さんとはセンスが合うよね。今日はすごく楽しかった。」
「私も楽しかったです。」
あの時はただのモテ男だと思っていたけど、私は佐藤さんと一緒にファッションショーを見ていたのだ。そう思うとなんだか余計に楽しかったように思える。
「宮島さん、俺の彼女になってくれない?」
昨日までの私だったら、簡単に頷いただろう。でも今は違う。佐藤さんは、前髪で超ド級の顔面を隠した陰気なキャラを装ったモテ男だと知ってしまった。
「次のレセプションは最初から一緒に行こう?ちゃんと迎えに行くし、エスコートもする。だから、俺の彼女に……」
「無理ですよ。佐藤さんと一緒にいると大変そうじゃないですか。いろんな人から恨まれそうだし。遊びは遠慮したいです。」
「遊びじゃないよ。本命の彼女!」
「というか、本当に彼女いないんですか?」
「いないよ!全部断ってたの見てたでしょ?」
「もしかして彼女じゃないけど?みたいなそういう感じですか?」
「彼女もいないしそういう相手もいない。宮島さんを彼女にするって決めて全員切ったし、番号も変えたんだ!」
「ごほっ、げほっ……」
むせてしまった。やはり佐藤さんには大量の相手がいたようだ。
「俺は、今の俺じゃなくて、会社の俺として付き合いたいんだ。宮島さんは会社の俺に話しかけてくれた。優しいし、思いやりがあるし、仕事頑張ってるし、可愛い。宮島さんは俺の理想の彼女なんだよ。」
そう言ってもらえるのは嬉しいけど、目の前にいる佐藤さんと会社にいる佐藤さんの見た目が違い過ぎて頭が混乱してしまう。
「わかった。まずは1ヵ月。それで不審なところがなかったら正式に彼氏にして。それまでは仮の彼氏でいい。」
そうまでして付き合ってくれと言われるなんて思わなかった。私が一方的に好きだった昨日までとは逆転している。正直なところ、目の前にいる佐藤さんは好きになれない。でも会社の佐藤さんと同じ人物だと思うと、無碍にできない。
「わかりました。1ヶ月なら……」
「やったぁ!」
佐藤さんは見た目に似合わず子供のように喜んだ。
「レセプションの時間は空いてるんだ。」
フロアの奥にはソファーが並んでいる。デートスポットに最適だが今は人がいない。私は佐藤さんと並んでソファーに腰を下ろした。
「ごめんね、本当に。最後の人……あの人につきまとわれて困っててさ……ようやく解放されたと思ったら油断した。そうだよね……名前聞いてないのに、名前呼んだら不審だよね。」
「サンチェス=ドマーニを着るとこんなに変わるんですね。」
完全に別人だ。
「レセプションの時はいつもこうなんだ。1人で行くって言ったのはそれが理由。最初は宮島さんを驚かせようと思ってたんだ。だけど、それだとナンパだと思われて終わりだって友達に言われて、別人の設定でいくことにした。」
確かに突然佐藤さんだと言われても信じられなかったかもしれない。佐藤さんの友達のアドバイスは妥当だ。
「Citrus D’amourで気づけばよかったです。」
「会社でつけてるの知ってるの?」
「え、あぁ……まぁ、たまたまショップで試したばかりだったので……」
「ふーん。なんか嬉しいかも。甘い香りは苦手で香水だけは買ったことがなかったんだけど、この香水はいいよね。」
「私もCitrus D’amourの香りが一番好きです。」
「ファッションショー見てて思ったけど、宮島さんとはセンスが合うよね。今日はすごく楽しかった。」
「私も楽しかったです。」
あの時はただのモテ男だと思っていたけど、私は佐藤さんと一緒にファッションショーを見ていたのだ。そう思うとなんだか余計に楽しかったように思える。
「宮島さん、俺の彼女になってくれない?」
昨日までの私だったら、簡単に頷いただろう。でも今は違う。佐藤さんは、前髪で超ド級の顔面を隠した陰気なキャラを装ったモテ男だと知ってしまった。
「次のレセプションは最初から一緒に行こう?ちゃんと迎えに行くし、エスコートもする。だから、俺の彼女に……」
「無理ですよ。佐藤さんと一緒にいると大変そうじゃないですか。いろんな人から恨まれそうだし。遊びは遠慮したいです。」
「遊びじゃないよ。本命の彼女!」
「というか、本当に彼女いないんですか?」
「いないよ!全部断ってたの見てたでしょ?」
「もしかして彼女じゃないけど?みたいなそういう感じですか?」
「彼女もいないしそういう相手もいない。宮島さんを彼女にするって決めて全員切ったし、番号も変えたんだ!」
「ごほっ、げほっ……」
むせてしまった。やはり佐藤さんには大量の相手がいたようだ。
「俺は、今の俺じゃなくて、会社の俺として付き合いたいんだ。宮島さんは会社の俺に話しかけてくれた。優しいし、思いやりがあるし、仕事頑張ってるし、可愛い。宮島さんは俺の理想の彼女なんだよ。」
そう言ってもらえるのは嬉しいけど、目の前にいる佐藤さんと会社にいる佐藤さんの見た目が違い過ぎて頭が混乱してしまう。
「わかった。まずは1ヵ月。それで不審なところがなかったら正式に彼氏にして。それまでは仮の彼氏でいい。」
そうまでして付き合ってくれと言われるなんて思わなかった。私が一方的に好きだった昨日までとは逆転している。正直なところ、目の前にいる佐藤さんは好きになれない。でも会社の佐藤さんと同じ人物だと思うと、無碍にできない。
「わかりました。1ヶ月なら……」
「やったぁ!」
佐藤さんは見た目に似合わず子供のように喜んだ。



