隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 会場を出てエレベーターを待っていると、佐藤さんが追いかけてきた。

「ごめん、宮島さん。騙すつもりじゃなかったんだ。」
「わかってます。もう大丈夫です。」

 佐藤さんが大量の前髪と眼鏡で顔を隠しているのは、素顔がとんでもなく美男子だからだ。顔を晒して歩いていたら、レセプションの時と同じように声をかけられまくるのだろう。だけど、待ち合わせするなら教えて欲しかった……そう思っているだけだ。

「話をさせて。お願い。」

 会社の佐藤さんは好きだけど、目の前にいる佐藤さんとは一緒にいたくない。でも、この佐藤さんと話して解決しておかないと、会社の佐藤さんと今まで通り話せなくなるかもしれない。それは嫌だ。

「わかりました。手短にお願いします。」
「わかった。」

 佐藤さんは私の手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。