隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 会場へ戻ると言っていたのに、佐藤さんは部屋へ行くのを諦めていなかった。

「違いますっ!ここじゃないです、8階っ!」

 私は佐藤さんの手を引っ張ってエレベーターに引き込むと、すぐさま8階のボタンを押した。エレベーターが動き始めて、私はほっと胸を撫でおろした。危なかった。あんなことされて平常心を保てていることが奇跡かもしれない。

「本気の俺が落とせないなんて……これで二度目だよ?手強過ぎるよ、さきは。」
「落ちてます。ちゃんと落ちてますから。」

 胸はドキドキしているし、全身が佐藤さんでいっぱいだ。これで落ちてないわけがない。

「嘘だ。落ちてたら断るはずない!」
「それとこれとは別です。」

 好きだからってすぐ部屋に連れ込むという感覚は、佐藤さんの中では常識かもしれないが、私の中では非常識だ。これだからモテる男の世界はわからない。

「絶対落としてみせる……もう一回だ!」
「えっ、ちょっ…………!!」



 佐藤さんのキスは過激だ。どんどん体の力が抜けて抵抗できなくなっていく。何もかもがどうでもいいと思った瞬間、エレベーターの扉が開いた。女性たちの叫び声が聞こえてくるが、佐藤さんは放してくれない。もう手遅れだ。

 モデルのKOTAには女がいるとバレた瞬間だった。