隣の部署の佐藤さんには秘密がある

「すみません、待ち合わせしてるんで。」

 あまりにも見た目が良いから気持ちが揺れそうになったが、これはただのナンパだ。早く佐藤さんと合流しなければと思っていると、ナンパ男は思いがけないことを言ってきた。

「待ち合わせしてるのって佐藤って奴?あいつ仕事で来られなくなったらしいよ。代わりに行ってくれって頼まれたんだよね。」
「佐藤さん来られないんですか!?」

 仕事が終わらなくて休日出勤になってしまったのだろうか。レセプションに行けるのをあんなに楽しみにしていたのに、自分だけ来てしまって申し訳なく思えてくる。

「あいつのことは気にしなくていい。一緒に楽しもう?1人なんでしょ?」

 目の前にいる男性はものすごくカッコいいし、会場の中にいる誰よりもサンチェス=ドマーニを着こなしている。それは認めるけれど、私はこういう軽い男が苦手だ。本当なら問答無用でお断りしたい。でも、佐藤さんが代わりにレセプションへ行ってくれと頼むような人だと思うと無碍にできない。

「……わかりました。」

 目の前の彼は楽しそうに笑っていた。