隣の部署の佐藤さんには秘密がある

「在宅にしたのも会長の御意向ですか?」
「本当は退職するつもりだった。平日も撮影だって言われて両立は難しいだろうなと思ったし、さきから別れたいって言われたこともあったから、少し距離を置こうと思って。でも、電話したら本城さんの声が死んでてさ。だから退職するのをやめて休職するって言って……結局、在宅でやれることはやりますって言った。」

「私、いらないことをしてしまいましたよね……あの時はすみません。」
「さきからのメッセージでしょ?あの時、スマホでやってたから全員に見られちゃったんだよね。恥ずかしかった~!でも嬉しかったよ。別れたいとか、しかるべき人と結婚すべきとか言ってたけど、気にしてくれてるんだと思って。そしたら調子に乗って全部引き受けちゃったんだよね。」

「聞きました。そのおかげで本城さんたち早く帰れたって次の日にお礼を言われたんです。」
「あの日はさすがにやばいと思って撮影を後にしてもらった。めちゃくちゃ焦ったけど火事場の馬鹿力で、今までで1番早く仕上げた。」

「それを聞いて、連絡するのはやめました。私も恥ずかしかったので……」
「そうだろうと思ったけど、さきのおかげで思ってる以上に元気が出た。その後、どんなに忙しくなっても頑張れたから。」

「今ではサンチェス=ドマーニのモデルですもんね。レセプションの時に頑なに拒んでいたのが嘘みたいです。」
「今回のショーに出ることが決まった時、これで終わりにしょうって思った。モデルの仕事の楽しさもわかってきてやりがいも感じるけど、やっぱり俺は佐藤晃太として働いている方が合ってるなって思ってさ。それで、姉ちゃんにさきを招待してくれってお願いした。Akaneの誘いなら断れないと思ったからね。」

 あの手紙はAkaneから届いた手紙だったから開封した。差出人が佐藤さんだったら、封を開けなかったかもしれない。

「ショーが始まるまでずっと不安だった。ちゃんと来てくれてるのかなとか、見てくれるかなとか……それでどこにいるのか探したんだけど、1着目のときは見つけられなくて……」
「あのパジャマを?」
「うん。あれを着ればさきは喜んでくれるだろうなと思った。それですぐわかったよ。ひょこひょこ飛んでたから。」

 そんなつもりはなかったけど恥ずかしい!