レセプション会場のあるホテルは、私の人生ではお世話になることがないような高級ホテル。ぎごちない動きでホテルへ足を踏み入れると、近くにレセプションの案内が出ていた。会場は8階のバンケットホールだ。エレベーターに乗り込むと、胸が高鳴った。サンチェス=ドマーニのレセプションとは一体どんな世界なのだろうか。
エレベーターを降りた私は息を呑んだ。どこもかしこもサンチェス=ドマーニだ。
「あれは去年出たワンピース。すぐ売り切れてた人気のやつだよね。あっちは確か2年前くらいに出たやつ。奇抜な柄だけど、着こなせる人もいるんだ……あれは、今年出たやつだよね。あのキラキラが良いんだよね~……」
ウェルカムドリンクを飲みながら、会場へ入っていくレセプションの参加者を目を凝らして見ていると、グリーンのワンピースを着た人が現れた。
「やっぱり綺麗だなぁ。あの色が一番かも……」
グリーンのワンピースは、私が始めて買ったサンチェス=ドマーニであり、私を虜にしたワンピースだ。
サンチェス=ドマーニとの出会いは今でも忘れられない。雑誌に載っていたグリーンのワンピースに衝撃を受けて、販売店を調べてその足で堂島屋のショップへ行った。グリーンのワンピースはその時の新作だった。店頭のトルソーを眺めていると三上さんに声をかけられた。
試着したら自分が生まれ変わったような気がした。着心地が良いとか、綺麗だとかそういう単純な言葉では言い表せないほど気持ちが満たされた。鏡の中の自分に見入ってしまい、試着室から出られなくなった。
心配した三上さんが声をかけてくれて、ようやく試着室から出てそのままレジへ向かった。表示された金額にはさすがに驚いたけれど、買わないという選択肢はなかった。
それからは、サンチェス=ドマーニを買うためにお金を貯めて、頻繁に店舗を訪れては三上さんから話を聞くようになった。私のサンチェス=ドマーニ人生は、あのグリーンのワンピースから始まったのだ。
思いを馳せていると、スタッフの人に会場へ入るように促された。私は戦へ向かうような気合いで、会場の中へ足を踏み入れた。
「おぉぉぉぉ!」
思わず声が出てしまった。ここに居る人たちはサンチェス=ドマーニ愛にあふれた同士だ。なんてすばらしい空間なのだろうか。
「えっと、16番テーブルは……」
私は佐藤さんとの待ち合わせ場所であるテーブルを探した。壁際の後ろから3番目には佐藤さんが言っていた通り16番テーブルがあるけれど、その周りには目を見張るような美人が集まっている。
あの場所へ行くのは気が引ける。佐藤さんが来たら行けばいい。私は参加者たちのサンチェス=ドマーニを見ながら会場の中を歩き回っていた。
しばらくするとアナウンスが聞こえてきた。時計を見るとレセプションの時間まであと5分。16番テーブルを見ても、そこにいるのは女性ばかり。
「もしかして、来てないとか?」
佐藤さんの部署は徹夜するほど忙しかった。直前に会った時も、ものすごく疲れていたから、寝過ごしてしまったのではないだろうか。連絡をしようとしてスマホを取り出した私は、佐藤さんに連絡先を聞いていなかったことを思い出した。
「大丈夫かな、佐藤さん……」
もうレセプションが始まってしまう。すると──
「ねぇ、君。1人?」
振り返った私は息を呑んだ。サンチェス=ドマーニの黒いスーツに身を包んだとんでもない美男子が目の前に立っていた。
エレベーターを降りた私は息を呑んだ。どこもかしこもサンチェス=ドマーニだ。
「あれは去年出たワンピース。すぐ売り切れてた人気のやつだよね。あっちは確か2年前くらいに出たやつ。奇抜な柄だけど、着こなせる人もいるんだ……あれは、今年出たやつだよね。あのキラキラが良いんだよね~……」
ウェルカムドリンクを飲みながら、会場へ入っていくレセプションの参加者を目を凝らして見ていると、グリーンのワンピースを着た人が現れた。
「やっぱり綺麗だなぁ。あの色が一番かも……」
グリーンのワンピースは、私が始めて買ったサンチェス=ドマーニであり、私を虜にしたワンピースだ。
サンチェス=ドマーニとの出会いは今でも忘れられない。雑誌に載っていたグリーンのワンピースに衝撃を受けて、販売店を調べてその足で堂島屋のショップへ行った。グリーンのワンピースはその時の新作だった。店頭のトルソーを眺めていると三上さんに声をかけられた。
試着したら自分が生まれ変わったような気がした。着心地が良いとか、綺麗だとかそういう単純な言葉では言い表せないほど気持ちが満たされた。鏡の中の自分に見入ってしまい、試着室から出られなくなった。
心配した三上さんが声をかけてくれて、ようやく試着室から出てそのままレジへ向かった。表示された金額にはさすがに驚いたけれど、買わないという選択肢はなかった。
それからは、サンチェス=ドマーニを買うためにお金を貯めて、頻繁に店舗を訪れては三上さんから話を聞くようになった。私のサンチェス=ドマーニ人生は、あのグリーンのワンピースから始まったのだ。
思いを馳せていると、スタッフの人に会場へ入るように促された。私は戦へ向かうような気合いで、会場の中へ足を踏み入れた。
「おぉぉぉぉ!」
思わず声が出てしまった。ここに居る人たちはサンチェス=ドマーニ愛にあふれた同士だ。なんてすばらしい空間なのだろうか。
「えっと、16番テーブルは……」
私は佐藤さんとの待ち合わせ場所であるテーブルを探した。壁際の後ろから3番目には佐藤さんが言っていた通り16番テーブルがあるけれど、その周りには目を見張るような美人が集まっている。
あの場所へ行くのは気が引ける。佐藤さんが来たら行けばいい。私は参加者たちのサンチェス=ドマーニを見ながら会場の中を歩き回っていた。
しばらくするとアナウンスが聞こえてきた。時計を見るとレセプションの時間まであと5分。16番テーブルを見ても、そこにいるのは女性ばかり。
「もしかして、来てないとか?」
佐藤さんの部署は徹夜するほど忙しかった。直前に会った時も、ものすごく疲れていたから、寝過ごしてしまったのではないだろうか。連絡をしようとしてスマホを取り出した私は、佐藤さんに連絡先を聞いていなかったことを思い出した。
「大丈夫かな、佐藤さん……」
もうレセプションが始まってしまう。すると──
「ねぇ、君。1人?」
振り返った私は息を呑んだ。サンチェス=ドマーニの黒いスーツに身を包んだとんでもない美男子が目の前に立っていた。



