会場の中は相変わらず煌びやかだが、やはり普通のスーツの人も多い。早速サンチェス=ドマーニ観察をはじめようとすると、あかねさんに呼ばれた。向こうから威光を放つ男性がこちらへ向かって歩いてくる。人を寄せ付けない雰囲気とオーラ。この人はきっと──
「お父さん、彼女がさきちゃんよ。」
(やっぱりそうだ!佐藤さんのお父さんであり、水伊勢グループの会長!佐藤さんと別れろと言ってきた張本人!)
「おじいちゃんには好評だったわよ。ここまで勝手にエスコートしてきたんだから。」
佐藤さんのお父さんは私から距離を取ったまま眉間に皺を寄せてこちらをじっと見ている。品定めされているようで息が苦しい。
「会社のことは龍司がやってるでしょ?晃太は自由にさせてあげて。」
会長は何も言わずに立ち去ってしまった。あれは絶対認めていない。やっぱり佐藤さんの相手はしかるべき人なのだ。
肩を落としていると会場の中へスーツの人が何人も入ってきた。中心にいるのは、雑誌でよく見る水伊勢龍司。佐藤さんのお兄さんだ。
「相変わらず取り巻きが多いわねぇ。」
龍司さんは長身で顔が整っていて頭が良さそうな、見るからに社長といった立ち姿をしている。
(でも雑誌で見た方がカッコいいかもな……)
失礼なことを思ってしまったことに気づいて焦った。きっとAkaneとKOTAのせいで無駄に目が肥えてしまっているのだ。邪念を打ち消していると、龍司さんがこちらへやってきた。
「姉さん、父さんは?」
「説教したらどっか行っちゃった。」
「説教?」
「さきちゃんのこと。」
龍司さんに見られて背筋が伸びた。
「始めまして。水伊勢龍司と申します。」
「は、初めまして!宮島さきです。」
近くで見ると緊張する。さすが水伊勢の社長!私は失礼なことを思ってごめんなさいと心の中で謝罪した。
「父さんはまだ認めないって?」
「何も言わないで行っちゃったのよ。もう認められたってことにしちゃおうかな。」
「父さんは俺だけじゃ不安ってことだよな。もっと頑張らないとな~」
「そうよ!あんたが頑張りなさい、社長なんだから。」
「そうだな。さきさん、晃太をよろしくお願いします!」
水伊勢グループの社長は丁寧に頭を下げて去って行った。清潔感があって物腰が柔らかく、丁寧でにじみ出る信頼感。それに、話しやすくて優しい。こんな社長の会社で働きたいと思わせる魅力がある。龍司さんは社長として完璧だ。
(そう、社長は見た目じゃない。大切なのは中身と経営手腕。)
無意識に失礼なことを考えていた私のところへ磯山さんがやってきた。
「こちらを宮島様へお届けに参りました。相談役から贈り物でございます。」
磯山さんは手のひらサイズのコンパクトミラーを差し出した。サンチェス=ドマーニのコンパクトミラーだ。
「ハンカチを拾ってくださったお礼だそうです。」
「好かれちゃったみたいね。もらっちゃいなさい。」
「ありがとうございます!」
同じ形の物をショップで見たことがあるが、少し違うような気がする。
「それ、関係者向けのレセプションで配布されるノベルディよ。」
「非売品ってことですか!?」
「今日もレセプションの最後に配られるわよ。楽しみにしてて。」
「絶っっっ対にもらって帰ります!」
「そんなに欲しいなら私の分もあげるわね。」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
サンチェス=ドマーニのノベルティがあるとは知らなかった。本当に来て良かった。コンパクトミラーをじっくり眺めていると、会場の明かりが徐々に暗くなってきた。
「さきちゃん、始まるよ。今日はファッションショーが最初。ちゃんと見てあげてね。」
私は急いでコンパクトミラーをしまった。オープニングからファッションショーだとは思わなかった。だんだんと動悸が激しくなってくる。私は聞こえてきた音楽と一緒に息を吸い込んで吐き出した。
「お父さん、彼女がさきちゃんよ。」
(やっぱりそうだ!佐藤さんのお父さんであり、水伊勢グループの会長!佐藤さんと別れろと言ってきた張本人!)
「おじいちゃんには好評だったわよ。ここまで勝手にエスコートしてきたんだから。」
佐藤さんのお父さんは私から距離を取ったまま眉間に皺を寄せてこちらをじっと見ている。品定めされているようで息が苦しい。
「会社のことは龍司がやってるでしょ?晃太は自由にさせてあげて。」
会長は何も言わずに立ち去ってしまった。あれは絶対認めていない。やっぱり佐藤さんの相手はしかるべき人なのだ。
肩を落としていると会場の中へスーツの人が何人も入ってきた。中心にいるのは、雑誌でよく見る水伊勢龍司。佐藤さんのお兄さんだ。
「相変わらず取り巻きが多いわねぇ。」
龍司さんは長身で顔が整っていて頭が良さそうな、見るからに社長といった立ち姿をしている。
(でも雑誌で見た方がカッコいいかもな……)
失礼なことを思ってしまったことに気づいて焦った。きっとAkaneとKOTAのせいで無駄に目が肥えてしまっているのだ。邪念を打ち消していると、龍司さんがこちらへやってきた。
「姉さん、父さんは?」
「説教したらどっか行っちゃった。」
「説教?」
「さきちゃんのこと。」
龍司さんに見られて背筋が伸びた。
「始めまして。水伊勢龍司と申します。」
「は、初めまして!宮島さきです。」
近くで見ると緊張する。さすが水伊勢の社長!私は失礼なことを思ってごめんなさいと心の中で謝罪した。
「父さんはまだ認めないって?」
「何も言わないで行っちゃったのよ。もう認められたってことにしちゃおうかな。」
「父さんは俺だけじゃ不安ってことだよな。もっと頑張らないとな~」
「そうよ!あんたが頑張りなさい、社長なんだから。」
「そうだな。さきさん、晃太をよろしくお願いします!」
水伊勢グループの社長は丁寧に頭を下げて去って行った。清潔感があって物腰が柔らかく、丁寧でにじみ出る信頼感。それに、話しやすくて優しい。こんな社長の会社で働きたいと思わせる魅力がある。龍司さんは社長として完璧だ。
(そう、社長は見た目じゃない。大切なのは中身と経営手腕。)
無意識に失礼なことを考えていた私のところへ磯山さんがやってきた。
「こちらを宮島様へお届けに参りました。相談役から贈り物でございます。」
磯山さんは手のひらサイズのコンパクトミラーを差し出した。サンチェス=ドマーニのコンパクトミラーだ。
「ハンカチを拾ってくださったお礼だそうです。」
「好かれちゃったみたいね。もらっちゃいなさい。」
「ありがとうございます!」
同じ形の物をショップで見たことがあるが、少し違うような気がする。
「それ、関係者向けのレセプションで配布されるノベルディよ。」
「非売品ってことですか!?」
「今日もレセプションの最後に配られるわよ。楽しみにしてて。」
「絶っっっ対にもらって帰ります!」
「そんなに欲しいなら私の分もあげるわね。」
「いいんですか!?ありがとうございます!」
サンチェス=ドマーニのノベルティがあるとは知らなかった。本当に来て良かった。コンパクトミラーをじっくり眺めていると、会場の明かりが徐々に暗くなってきた。
「さきちゃん、始まるよ。今日はファッションショーが最初。ちゃんと見てあげてね。」
私は急いでコンパクトミラーをしまった。オープニングからファッションショーだとは思わなかった。だんだんと動悸が激しくなってくる。私は聞こえてきた音楽と一緒に息を吸い込んで吐き出した。



