隣の部署の佐藤さんには秘密がある

 レセプション当日。気合を入れてメイクをしたがいつもより濃くなっただけだった。髪型も延々とやっているが、いまいちピンとこない。こんなことならプロに頼んでしまえばよかった。

「今日の主役はドレスだからね。着ればなんとかなる!」

 私はサンチェス=ドマーニのドレスに袖を通した。

「きゃ~ふふ……ふふふ……」

 ウキウキして笑いが止まらない。気持ち的には仕事に行く時も着ていきたいくらいだ。準備を整えてひとりファッションショーを繰り広げているとインターホンが鳴った。

「わぁ、あかねさん!すごく綺麗です!」
「さきちゃんも綺麗よ。」

 ドレスアップしているあかねさんは圧倒されるほど美しい。私は無意識のうちに両手を胸の前で組んでいた。

 これまで毎日ドレスを試着して、靴も履いてシミュレーションして来たが、部屋を出てすぐに階段という関門にぶち当たった。早速転んでしまいそうだったが、磯山さんがそれとなく手伝ってくれた。さすが執事だ。

「今日のレセプションは関係者向けだからちょっと違うかもしれないけど、楽しんでね。ついでにうちの家族を紹介するから。」

 あかねさんの家族は、佐藤さんの家族であり、水伊勢家。私に別れるように言ってきた佐藤さんのお父さんも含まれている。私は背筋が凍る思いがした。