「ただいま。」

ローファを脱ぎながら
息をつく。

「おかえりなさい。」

リビングからママの声が聞こえた。

「美乃里、おかえり。」

これがあたしのお兄ちゃん。
山崎樹。


「ただいま。」

そう答えて、自分の部屋に
向かった。

部屋着に着替えて、
携帯を触っていると、

ドアの方からお兄ちゃんの声が聞こえた。

「美乃里、入っていいか?」

「うん、いいよ。
入って。」


お兄ちゃんは、
オレンジジュースとお菓子を
抱えて、子供のように
じゅうたんの上に座った。

どうしてこの人が、
恐れられるんだろ…。

疑問に思ったりしながら、
お兄ちゃんに話しかける。

「お兄ちゃん、急にどうしたの?」

「あぁ、美乃里、学校はどうだった?」


学校か。
もう、行きたくないくらいの
レベルだよ。

心の中で呟いた。

「友達っぽいのだって、
出来たよ。」

「そうか、よかった。」

「裕也がいた。」

今日はあった出来事を、
お兄ちゃんに話す事にした。

「裕也?」

「うん。裕也だよ。
付き合わないか。って言われて、
もちろん、断ったんだけどね。
前の事、思い出しちゃったよ。」

「そんなことがあったのか。
美乃里は、もう前の美乃里じゃないだろ?」

「うん。
あたしはもう、
暗黒の蝶なんかじゃないよ。
お兄ちゃん、ありがとね。」

「いや、いいんだよ、俺は。
また何かあったら、
言えよ。」

そう言って、お兄ちゃんは
部屋を出て行った。