ページのすみで揺れていたもの

私は再び周囲に目を走らせた。
瓦礫の影で、小さく身体を震わせている人影が目に入る。

駆け寄ると、それは中学生くらいの女の子だった。
制服は埃にまみれ、倒れた自転車のそばで地面に座り込んでいる。
苦痛に歪んだ顔。右足首が不自然に腫れ、靴も脱げかかっていた。

「大丈夫、今行きますね!」

しゃがみ込み、優しく声をかける。彼女は涙を浮かべながら、かすかにうなずいた。

顔色は悪くない。会話もできるし、意識ははっきりしている。
外傷は見当たらず、呼吸も問題ない。でも、この足じゃ歩けない――いや、歩けないわけじゃない。

「ちょっと見せてね」

腫れ上がった足をそっと両手で支えながら観察する。
骨折か捻挫か……いずれにしても、今は固定が必要だ。

私は周囲を見回し、すぐそばの車の助手席にある折りたたみ傘が目に入った。

「……使えるかも」

ガラスが割れていた助手席のドアから手を伸ばし、折りたたみ傘を引き抜く。
柄の部分はしっかりしていて、即席の添え木にちょうどいい。

私は自分の服の裾を裂き、細長くちぎった布を即席の包帯にする。

「少し痛いけど、我慢してね」

傘を足首の外側に沿わせて、慎重に巻きつけた。

簡易的な添え木。だけど、何もないよりずっとマシだ。

「これで少し楽になると思う。立てそう?」

彼女は不安げな顔をしながらも、うなずいた。
私は彼女の手を取って、ゆっくりと支えるように立たせる。

「……うん。片足だけなら、ケンケンで行けると思う」

「よかった。じゃあ、安全な場所まで、少しずつ移動しよう」

彼女の手首に「緑」と書き込む。
その意味を説明すると、彼女はほっとしたような笑顔を見せた。

倒壊の恐れがあったり、燃え上がった車の近くといった危険な場所から離れた安全そうな場所まで一緒に移動した。

「すぐ戻るから、それまでここで待ってて。絶対に、誰かが来るから」

離れようとすると手を引っ張られた。ここに一緒にいてくれないの?と。

「私ね看護師の卵なんだ!ここにはいっぱい助けを呼ぶ声がするでしょ?少しでも私ができることはやりたいの。分かってくれる?」

コクリと頷く女の子。ありがとう、頑張ってと笑顔で送り出してくれた。