ページのすみで揺れていたもの

視線を走らせながら、次に優先すべき人を探す。

少し先の車道で、人だかりがない場所に、ひとり倒れている男性が見えた。
誰にも気づかれていないようだった。

服の胸元が血で染まっていて、顔は不自然に傾いている。
動いている様子はない。

私は思わず小走りになった。

「すみません、大丈夫ですか……聞こえますか?」

返事はない。

呼吸してる?
脈は?

焦るな、確認。順番に。

手を胸に伸ばし、口元に耳を近づけて呼吸を確かめる。
鼻先に自分の頬を近づけて、息がかかるか感じてみる。

……わずかに、ある。

次に頸動脈に指を当てる。
脈は、弱くて速い。

意識なし、呼吸あり、脈あり。出血あり。

——赤。

「すぐ来るから、もう少しだけ、頑張ってください」

意識はない彼の手を握りながら必死に声をかける。私にはこれしかできないから。

彼の右手首に「赤」と書いて、

もっとこの人に何かできることがあるかもしれないという気持ちに後ろ髪を引かれる思いでその場を離れる。

次に行こうとした時少し離れたトンネルの入り口で救急車の赤い光が見えた。入り口の方でも重症者がいて運ばれたのかすぐにサイレント共に光は遠くなっていった。

光が遠くなると同時にまた次の負傷者の元へ急いだ。