ページのすみで揺れていたもの

電話がつながっているという安心からか私はかすかに肩の力が抜けた。

(……吸入器!)

床に転がったまま、震える手を伸ばしてポーチを探る。
先日、赤井先生に処方されたばかりの吸入器。
まだ使い慣れてもいないけど、これにすがるしかなかった。

キャップを外し、口に当てる。
咳が止まらず、吸入のタイミングが掴めない。
なんとか吸うが

「っ、か……っ、ごほっ、ごほっ!!」

咳と同時に吸入してしまい、
薬剤が気管の途中で引っかかったような苦しさに変わった。

咳が止まらなくなって、再び体が痙攣のように跳ねる。


「……ひ、ゅ……っ」

――吸えた。

まだ咳は出ている。
でも、それまで全く入ってこなかった“空気”が、
少しずつ肺に届くようになってきた。

(……吸えてる。まだ、苦しいけど)

横たわったまま、私はスマホの画面を見つめた。

「通話中」の表示が、
まだそこに残っている。

そして、
“この人が来てくれる”という思いだけが、
呼吸の隙間に、少しずつ希望を送り込んでいた。