ページのすみで揺れていたもの

トンネルの中、視界が霞んで、叫び声や崩れる音が遠くから響いてくる。

何人も倒れていて、
呼吸が荒くて、足が動かなくて、
でも“行かなきゃ”って、そう思って――

「……っ、う……っ……!」

――目が覚めた。

暗い部屋。朝なのか夜なのか分からない。
寝汗で肌着が張り付いていて、呼吸が妙に浅かった。

(……まただ。夢)

いつからか、たまに夢に見るようになったあの日の光景。
でも今日は、目覚めても胸の圧迫感が引かなかった。

「……っ、は……はっ……」

体が震えていた。
喉が締めつけられるように苦しくて、空気が入ってこない。

過呼吸。

違う、これは――

(……息、吸えない……!)

手が震えて、スマホを手に取った。
何を考えるより先に、指がある番号をタップしていた。

呼び出し音が1回、2回――

『……ん、誰?』

寝起きの声。
誰だかも確認していない、油断した声だった。

でもその声に、ほっとした気持ちがにじんで、
言葉にしようとした――けれど、

「……っ、……っ……!」

出ない。
喉が絞まって、何も出せない。
吸えなくて、吐けなくて、ただ震えるだけ。

スマホの向こう、数秒の沈黙。

そのまま、時間が止まったかのように、ただ“繋がっている”だけの状態が続いた。

でも私は、その番号を切ることができなかった。

――ただ、誰かに繋がっていたかった。