ページのすみで揺れていたもの

最初に向かったのは、すぐ近くにあった車の横でうずくまっていた女性だった。

「大丈夫ですか?」

声をかけながらしゃがみ込むと、彼女はうっすらと顔を上げた。
額に血がにじんでいて、呼吸が浅い。

「ここ、痛みますか? 息苦しくないですか? 名前、言えますか?」

少し時間をおいて、彼女はかすかに名乗った。

意識あり、会話可能。呼吸も保たれている。
出血はあるけど、今すぐではない。ただ自分で歩くことはできないみたい。

——黄。(歩行はできないが命に直結しない)


実習帰りだった私はユニフォームから油性ペンを取り、彼女の右手首に「黄」と書いた。

「救急隊が来たら、すぐ伝えますね」

小さく頷いた彼女の表情を確認し、私は立ち上がった。あんなに痛かった腕も肋骨も今ではそこまで感じない。

早く次に行こう!

もっと苦しそうな声がするほうへ——。