ページのすみで揺れていたもの

あの日、藤澤先生が突然部屋に現れて、
何も押しつけず、ただ話を聞いてくれた――

けれど、それでも私は病院には戻れなかった。

“まだ大丈夫”という気持ちと、
“今戻ったら、何かが終わってしまいそう”という不安。

その二つが交互に押し寄せて、
結局、検査の予約も、再診も取らないまま、時間だけが過ぎていった。

そして、そんな日々の中で、
藤澤先生は、何度か“顔を見に”来るようになった。

仕事の合間にふらっと現れては、
「なんか食ってんのか」とか「テレビばっか見てんじゃねーぞ」とか、
くだらないことを言って、10分もしないうちに帰っていった。

特に深い話をするでもない。
でも、何も言わないことが、逆に安心だった。

「……なんで、そんなに気にしてくれるんですか?」

そう聞きたくなる瞬間は、何度もあった。何を期待してそんなことを聞こうとしているのか自分でも分からない。

そしてある日。

朝からなんとなくだるかった。
熱を測ると37.5℃。微妙な数字だったけれど、身体の重さははっきりしていた。

(……風邪、かな)

自分にそう言い聞かせて、ベッドで横になっていたとき。
また、インターホンが鳴った。