ページのすみで揺れていたもの

トンネル内の騒がしさは相変わらずある中、

私の役目は終わったみたいだから邪魔にならない様に早く出なきゃと

近くにいた救助隊の方に支えられながらゆっくりと立ち上がった。

体は重たかった。でも、歩けないほどじゃない。

藤澤「おい、ちょっと」

振り返ると、藤澤先生が立っていた。
近場の負傷者の処置を終え、他の負傷者の方へ向かう途中だった。

「はい……?」

そう答えた瞬間――

藤澤「よくやったな」

その言葉とともに、彼の手がふいに私の頭に伸びた。

クシャッ――と、軽く乱暴に髪を撫でられる。

驚きで言葉が出なかった。
けれどその手には、不思議と痛みも冷たさもなかった。

むしろ、ずっと誰かにそうしてほしかったような気がした。

藤澤「……次、倒れる前に言えよ。無理してる顔、バレバレだ」

短くそう言って、藤澤は私に背を向けた。

彼の背中が再びトンネルの奥へと消えていくのを見ながら、私は胸の奥がふわっと温かくなるのを感じた。

トンネルの先――外の光が見えた瞬間、何かがじわっとこみ上げた。

「気をつけてね、段差あるから」

「……はい」

ふらつきそうになる体を支えてもらいながら、一歩ずつ、出口へ向かって歩き出した。