あたしたちは、部屋のソファの前まで来た。


「大和、どうしたの?早く行かなきゃ__」

「……朱羅」

「え……って、ん!?」


あたしがなんで驚いたかって?
それは__

……大和が、あたしをソファの上に押し倒したから。
押し倒したって言っても、軽くね。

油断してたから、いつもは避けられるけど、今は出来なかった。


「どっ、どうしたの、大和……?」

「……」


あたしの呼びかけにこたえない大和。
その代わり、あたしを覆いかぶさるように上に乗った。


そういえば、大和って、キレイな顔してるな……。

透き通ったグリーンの髪。
何もかもを貫くような、赤い瞳。
体もがっちりしていて、高校生の男の子って感じ。
まだ中学生なのに。

しばらく見惚れていると、そのキレイな顔が近づいてきた。

え?え??


「し……!?」


あたしはまた驚いた。

だって__

だってだって……大和が、あたしの……

あ、あたしの頬に、き、きキス……しししししたから……!!!


「ちょっ、大和!!」


あたしがいくら胸を叩いても、司御はビクともしない。
な、なんで……!?
あたしの方が、力は上のはずなのに……。


「……そんなんで、俺がやられるとでも思いました?」


そう言って、余裕の笑みを浮かべた大和。

__いつもの大和じゃない……。

そのまま大和は、あたしの唇の横、首、あご、おでこ……と、キスをしていった。

え……

ほ、本当に……どうしちゃったの、大和……!!?!

ていうか、今さらだけど……

も、ものすごく__ハズカシイ……。

は、早くこの状況から逃れねば……!!
心臓が持たないっ……!!


「や、大和……」

「朱羅……」


そう、あたしの名前を呼んだとたん、大和はソファから降りて、あたしへ手を差し伸べた。


「……ほら、早く行きますよ。お嬢」

「ん……?……んっ!?」


え!?
や、大和まさか……
さっきのこと忘れてんの!?

まるで何もなかったかのように振る舞う大和。

よ、よくわかんないよーー!!


「……もう!大和のバカ!!」

「は、はあぁ?」

「ふん!もう知らんし!!」

「え、ちょ、お嬢……!待ってくださいよ!」

「ふーんだ」

「……さ、さっきのことは謝りますから……!」

「何よ覚えてるじゃない!何もなかったようにして!!……は、恥ずかしかったん……だから……ね!ふん!」


そう言ったら、大和は黙った。

ん……?

振り返ると、大和はうつむいて……
笑ってる?

んん??

し、大和の行動が読めない……。


「……ふ、ははっ」

「むう、なによ!」

「いや、お嬢って恥ずかしがるとかあるんですね……ふふ、ふはっ!」

「なんでそんなに爆笑してんの!?ていうかは、恥ずかしがるとか……普通だし!!」

「いや、そういう人じゃないと思ってました……ふふ」

「もぉ〜……」


思いっきりバカにされてるような……。
悔しい!!


「でも、そんなとこもかわいいですよ」


__ドキンっ。

え……?

かわっ……かかわっ“かわいい”……!?

えええ!!え、今何が起こったの……!?

ててていうか、あたしも『ドキン』ってなによ『ドキン』って!!

あたしは突然のことが多すぎて、プチパニック状態。


「ふ、照れちゃって。乙女ですか」

「……っもう!大和のあんぽんたん!!いきなり……か、かわいいって……!」

「思ったことを言っただけですけど……?」


大和はキョトンとしている。

うぐぅ、なんでそんな悪気なさそうな……。

精一杯の力?で、キッと大和を睨む。


「そんなことしても怖くないですよ〜。本気でやられたらマジ死にそうですけど、今は子猫の威嚇です」

「な……っ!!」


なな、なんでそんな甘い言葉口に出すの……!!

顔真っ赤になるじゃん!!

んもう!!大和なんて、無視しよ……!


「もう本っ当に知らん!」

「すみませんって」

「ふん!!」


あたしは意地を張って、何度も呼びかける大和を無視し続けた。

うぅ……。
それにしても、本当に恥ずかしかったな……。
あんなことをするなんて……しかもいきなり……。

あぁもう!!思い出すだけで顔赤くなってきた!!

見られないように、両手で顔を隠す。

でも……


「お嬢、どうしましたか?」


その行動を不審に思ったのか、大和が聞いてきた。

……よし、誤魔化そう!そうするしかない!


「な、なんでもない!!」

「そう。なら、いいですけど……」


そのあと、あたしたちは静かにアジトの外に出た。