__コツ、コツ、コツ……

静かな夜の道に、あたしの足音だけがひびく。

夜って不思議だね。

なにもかもが、暗闇の中に溶け込んでいく感じがして……

おもしろい。

そんな夜が、あたしは大好き。


しばらく歩いて、ある家の前にやってきた。

インターホンを鳴らす。
それでも何も返事とかないから、そのままおじゃまする。

まあいつもの事だけど!
たま〜に来てくれるんだけどね。

家の中は、至って普通。
でも普通じゃないところもある。

あたしはまっすぐにある階段のところへ行った。
その階段は、下に続いている。

だからもちろん、あたしは下に降っていく。

『おかしいな』って思う人がいるかもしれない。
でもここは普通じゃないから♪

……着いたっ!


「みんな〜!来たよーー!!」

「「「「おっす!!“お嬢”!!」」」」

「あははっ、相変わらず、みんな元気〜」


あたしが挨拶したとたん、その場にいる全員が大きな声で挨拶をして、頭を下げた。

別に頭下げなくてもいいんだけどな〜。

……ってあれ、“流樹有(るきあ)”と“大和(やまと)”が居ない。


「んねね、流樹有と大和ってどこにいる〜?」


すぐそばに居た幸樹(ゆうき)に聞いてみた。


「ああ、流樹有さんたちならあそこの部屋にいますよ」


そう言って、奥にある扉を指さした。


「ありがと〜」

「いえ!お役に立てて良かったです!」

「律儀なやつ〜」

「笑わないでくださいよ!それと、律儀……?にするのは当たり前です!だってお嬢相手なんですから!」

「そっか〜、あたしは別に敬語じゃなくてもいいんだけどな〜」

「ダメです!」

「俺ら死んじゃう〜」

「色んな意味で……」


他のメンバーたちも加わってきた。


「はいはい、わかったわかった。じゃあみんな、また後でね〜。幸樹、ありがとね〜」

「「「「うっす!!」」」」


お礼を言いながら手を振って、幸樹に教えてもらった部屋に向かう。

ふふっ、2人のこと驚かせちゃお〜☆

静かにドアを開けて、そ〜…っと部屋に忍び込む。


「コイツら、今日で片付けときますか」

「そうだな。でも、まずはお嬢が来るのを待って__」

「わっ!!!」

「「うぉ!!?」」


へへっ、成功〜♪

どうやら、気づかれてないようだった。

驚いてる2人、おもしろ〜!


「えっへへ。やほ〜、2人とも!」

「お嬢!やっと来ましたか〜!驚かせないでくださいよ〜」


元気なのは、鳳凰 流樹有(ほうおう るきあ)。
リーダーシップがすごくて、“MONSTER(モンスター)”のみんなをまとめるのが誰よりも上手いの!

あたし“総長”なのに、“副総長”に負けるの悔しいーー!!


「お嬢、遅いです。あと、驚かせないでください。心臓が飛び出でるところでした」

「あはは、ごめんごめーん……って、そんくらいで心臓出る……?」

「はい」


敬語なのは獅子澄 大和(ししずみ やまと)。
めっちゃ頭良くて、いつも落ち着いてて、『The・完璧主義者』って感じなの。

でも、さっきみたいにたまに天然になる。
そこが、めっちゃ面白いんだ〜☆


「ところでお嬢、いつも『アホ』みたいに元気ですが、今日はそんなに『アホ』じゃなくて『バカ』ですね。お嬢らしくないです。何かあったんですか?」

「んもう!『アホ』と『バカ』を強調しないでよ!!ん〜とね……」


いつも通りに振る舞ってたはずなんだけどな〜。

やっぱり“相棒”にはバレちゃうか、あはは。

にしても言えないしなあ。


「……特に何も無いよ!」

「そうですか?まあ、ならいいですけど……」

「何かあったらなんでも言ってくださいね!」

「流樹有の言う通りです」

「うん。2人とも、ありがと!」


誤魔化すしかない。
どうやら信じてくれたみたいだ。

……でもあたしを疑うことを知らない2人を想うと良心にハリが……うぅ。

嘘ついちゃって、ごめんなさい!
心の中で、そう謝っておく。


「ねえねえ、なんのこと話してたの?」

「“magnificent(マグニフィセント)”のやつらのことですよ。最近、ここら辺で暴れてるヤツら」

「はい。今日で片付けようと」

「ああ、なるほどね。そういえば、そんなヤツらもいたね〜」

「ええ、ですからあなたを待っていたんです。もう準備もすませてますよ」

「さっすが大和〜!頼りになるう!」

「いえ」

「んじゃあ行きますか!」

「うい!」

「はい」


流樹有の合図で、3人で部屋を出る。

あ!そういえば……。


「あのさ、みんなには言ってるの?」

「まだ言ってません!」

「えぇ〜、大丈夫か〜?」

「大丈夫っすよ!アイツらなら、できますって」

「確かにそうだね」

「集めてきます」

「おお!よろしくね〜」


magnificentを潰すことは、まだ伝えてないみたい。

でも大丈夫。
みんな冷静沈着?で頭いいから!


《これから集会を開きます。いつもの場所に、早々に集まってください》

「大和センパイ?」

「招集か……最近多いな」

「なんだろ?」

「どっかの暴走族潰すとかじゃね?」

「ありえる!」


突然の招集にザワつきつつも、みんなホールの方へ向かっていく。

それに続いて、あたしたちもホールへと向かう。

そのまま、あたしと流樹有は大和が居るらしき舞台の裏まで小走りで行く。


「来ましたか」

「やっぱここ居たか〜!」

「ささ、早く舞台上がりましょ」

「急かすなよ〜」

「「あはは!」」

「ほら、2人とも急いでください」


3人でふざけあって?舞台に上がる。

でも、みんなの顔が見える位置に来る頃には、もう話さず、真剣な顔付きで演台の前へ行く。


「……」


しばらくの間、沈黙が流れる。

その沈黙を破って__


《これから、あたしたちMONSTERは、magnificentを潰しにいく!!》

「「「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」」」


あたしがそう宣言すると、一員は全員大声を上げた。

うん、いい感じだね。


《じゃあ、作戦の説明を流樹有、大和。よろしく》

《はい。まずは__》


2人にバトンタッチ。
作戦はまだあたしは聞いていないからね。
ちゃんと集中して話聞いとかないと!


《__以上が、今作戦だ!》

《何か質問のあるやつはいますか?……いないですね。では、これで作戦の説明を終わります》

「お嬢!最後に一言どうぞ!!」

「はーい!」


作戦の説明が終わったから、次はもう1回あたしの番。

そうだな〜、掛け声として……こう言うか!!


《みんな!!》

「「「「うっす!!!」」」」

《あたしたちは、『日本NO.1の暴走族』だ!!その名に恥じぬよう、行動せよ!!》

「「「「はい!!!!」」」」

《じゃあこれで、集会を終わる。攻める準備を》


__そう。

あたしたちは、日本NO.1暴走族
“MONSTER(モンスター)”。

“暴走族”って言っても、一般人に迷惑をかけたり喧嘩ふっかけたりとかはしないよ☆

あたしはそのトップ。つまり総長。

へへっ、あたしMONSTERのなかで1番強いんだ〜♪
だから、実質?日本で1番強い!

まあ、あたしが文句のつけようのないトップとは、言いきれないんだけどね。

強くても、暴走族に入っていない人もたくさんいるから。

そしてここは、そのMONSTERのアジト。
この上は、MONSTERメンバー155名の4分の1くらいのメンバーが住んでいる。
いわゆるシェアハウスってやつだ。ちょっと多いかもだけど。

ちなみに、流樹有が副総長で、大和があたしの相棒だよ☆

あたしは総長だけど、それと同時にMONSTERの“姫”でもあるの。


ふふっ、いい感じに締まった。
さすがあたし☆


「お嬢」

「ん!行きますか〜♪」

「いや、そうじゃなくて……」

「え?」

「ちょっとついてきてください。流樹有、先に行っててください」

「え?ええっ?」

「おう!」


そう言って、大和はあたしの手を取ってさっきまで居た部屋に連れていった。