今日はパパたちの友達の家に居候を始める日。

うわー！なんかよくわかんないけど緊張する〜！！

荷物は先週のうちに運んでもらっていた。
部屋の中はからっぽだ。

家にバイバイしてから、車に乗り込む。

『どう思われるかな？』『迷惑じゃないかな？』
不安がどんどん募っていく。
あれよあれよと考えていたら、あっという間に居候先に着いていた。

自分の家より少し大きい家。
シンプルなベージュ色でコーティングされている壁や屋根は、とてもきれいだった。

ここに半年もおじゃまするのか……。
な、なんだか気が引けるな……。

ママがボタンを押すと、『ピンポーン♪』って音が鳴ったすぐ後に、「はーい！」って、女の人の声がした。

足音が近づいて、ガチャッと扉が開く音がする。

なかから、背の高い女の人と男の人が出てきた。


「こんにちはー！来たのね！」
「こんにちは。久しぶりだね、2人とも」


元気そうな女の人と、優しそうな落ち着いた男の人。
わ〜、めっちゃいい人そうじゃん！

車の中ではあんなに不安だったのに、2人の姿を見たとたん、そんな思いが吹き飛んだ。


「あら！あなたが朱羅ちゃん？」

「は、はい！こんにちは！」


いきなり話しかけられたから、ちょっとびっくりしたけど、笑顔で挨拶をする。


「やあ朱羅ちゃん。よく来たね」


男の人も挨拶してくれた。


あっ……そういえば、2人の名前を聞いてなかった……！
どうやって聞こう？直だとなんか気まずいなあ……。


「私は亜樹(あき)よ」

「僕は優採(ゆうと)だよ」


考えていると、あたしの心を読み取ったかのように、2人が名前を教えてくれた。

亜樹さんと優採さんかあ……素敵な名前だな。


「教えてくれてありがとうございます！亜樹さん、優採さんって呼ばせてもらいますね！あたしのことはなんて呼んでも大丈夫です！」

「まあ！なんてかわいい子！娘にしたいわ〜」

「ほら亜樹、雷虎(らいと)たちに失礼だぞ」


雷虎とは、パパの名前。

亜樹さんが、あたしを抱きしめて頬ずりをしてくる。
大人なのに、なんだか妹みたいだ。

しばらく5人で話したあと、パパたちは空港に行った。

見送りしたかったけど、「大丈夫だよ。また今度な！」って断られちゃった。

あ〜、なんだか寂しいな……っていけないいけない！亜樹さんたちに失礼だよ。


「じゃあ朱羅ちゃん、まずはリビングに行きましょう！案内するわ。あがってあがって」


亜樹さんが親切に言ってくれた。


「お、おじゃまします！」

「ははっ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。もうここは、朱羅ちゃんの第2の家みたいなものだからね」


優採さんがそう言ってくれたおかげで、緊張がほぐれた。
第2の家か……なんだか嬉しい。


そのあと、優採さんは仕事があるみたいで、申し訳なさそうにしながら部屋に戻っていった。

優しいなあ。


「朱羅ちゃん、こっちよ」


亜樹さんが、手を取って案内してくれる。
重なる手が、じんわり暖かい。

少し歩いて、たどり着いたリビングは……すごく広かった。

茶色で統一された家具は、ベージュの壁と合っていて、秋みたいだなって思った。

亜樹さんが秋好きなのかな？名前も『あき』だもんね、ふふっ。

部屋を見わたしていると、なぜか……4人の男の子が居た。

……ん？
見間違いかと思って、軽く目をこすってみた。
まだ見える。
まさか……夢だったりして？
軽く頬をたたく。
痛くはないけど、ちょっと熱くなってる。

……夢じゃ……ない？
ゆ、夢じゃないなら、なんでここに男の子が……！？しかも4人！！
一体、どういうことなの……！？