「…そういうことなので、スカイ・バルはしばらくお休みさせていただきます」
「分かりました。ちょっと残念ですけど」
「また必ず復活しますから」
「はい、楽しみにしてます」
「ここにも、ぜひ食べに来てくださいね」
「来ます!絶対」
そう言った私は早速、週末のランチに、空さんのレストランを訪れた。
あの日交換したLINEで、「今日行きます!」と伝えたら、空さんからは「お待ちしてます」と返ってきた。
一人で行くか、倉持さんを誘おうか迷ったけど、結局一人で来ちゃった。
やっぱり、最初はゆっくり空さんの料理を味わいたいなぁって。
一人でこんなオシャレなレストランって、ちょっとドキドキしたけど、緊張も吹っ飛ぶくらい料理が美味しかった。
前菜からスープに、お魚、お肉まで。
どれもすごく美味しくて、もう幸せ。
最後のデザートをゆっくり味わっていると、
「優花さん」
「あっ空さん」
忙しいのかお店に来てから見かけてなくて、今日初めて会う空さん。
スカイ・バルの時のエプロン姿と違って、ザ・シェフって感じの決め決めな姿に、ちょっとドキッとする。
「早速来ていただいてありがとうございます」
「いえ、そんな」
「料理どうでした?」
「もうとっても美味しかったです!こんな本格的なフレンチ食べたことなかったので、ほんとに来てよかったです」
そう伝えると、空さんは嬉しそうに笑った。
「優花さんって、いつもほんとに美味しそうに食べますよね」
「え、いつも?」
「あ…スカイ・バルで買った後、公園のテーブルで食べてるの、よく見てました」
「えっ!」
まさか気づいてたの?
いつもお客さんの対応で忙しそうだったし、近い距離じゃないし、絶対気づいてないと思ってた。
え、恥ずかしすぎる…!
私がびっくりして黙ってしまったら、
「あ、あの、変な意味じゃないんです」
空さんが慌てて言う。
「ただ、僕が作ったものをほんとにいつも美味しそうに食べてくれてて、そんな姿がいいなぁと思ったというか…」
一呼吸置いた後、
「そこに惹かれました」
空さんの言葉がまっすぐ胸に飛び込んできた。
「あ…ありがとうございます、」
惹かれた、なんて初めて言われて、ドギマギしちゃう。
「すみませんなんか、急に」
「いえっ全然、」
「…あの、じゃあ僕はこれで。ごゆっくりしていってください」
「あ、はい」
空さんは照れくさそうにはにかんで、お店の奥へ戻っていった。



