爽やかな空に恋しました

どういうこと?


「いなくなったのは、私のせいじゃないんですか」

「え?いやいや、どうして優花さんのせいになるんですか?」

「、それは…」

私がご飯に誘ったから、じゃないの?

心の中で呟く。


「あの、ちゃんと説明させてください。僕がいなくなった理由」

「…はい」

「ありがとうございます」

ホッとした表情に変わった空さん。


「よかったら場所を移したいんですけど…時間平気ですか?もう遅いので日を改めてでも」

「いえ、大丈夫です。まだ全然電車ありますし」


今度またいつ会えるか分からない。

今聞きたい。


「分かりました。そしたらちょっとついて来てもらってもいいですか?」

「はい。どこかお店ですか?」

「お店です。5分くらいで近いので」


空さんはそう言って、地図も何も見ずに歩き出した。


今向かおうとしてたお店なのかな。


時刻はちょうど22時を過ぎたくらい。

今からとなると、深夜もやってる居酒屋とか?

どこだろうと考えながらついて行く。


「ここです」

足を止めたのは、高級レストランのような、オシャレな外観のお店だった。

「ここ…」

「中へどうぞ」

空さんがドアを開けてくれ、お礼を言って中へ入る。


お客さんは一人もおらず、電気も一部しか付いていなくて、少し暗い店内。


「ちょっと暗いですね。今電気つけますね」

空さんが奥へ行って、少しして明るくなった。


「あの空さん、ここは…」

「実は僕、今ここで店長してるんです」


奥から戻ってきた空さんはそう言った。


「店長?」

「と言っても代理ですけどね。店長代理」

「え…どういうことですか?」


頭が追いつかない。


「もともと僕、ここで働いてたんですよ。5年くらい。辞めてからも、店長とは親しくしてて」

「はい」

「それでこの間、連絡が来たと思ったら、急に入院することになったから店長代理やってくれないかって言われたんです」

「えっ…」

「予約客がいるから休めない、俺の味を知り尽くしてるお前にお願いしたいって。そんなこと言われたらやるしかないですよね」

空さんは困ったように笑った。


「そうだったんですね…」

「ほんとに急だったので、スカイ・バルを突然お休みすることになってしまって…すみませんでした」

「いえそんな、謝らないでください」

「ずっと気になってたんですよ、優花さんのこと」

「え?」

「ご飯に誘ってくれたじゃないですか。でも会えなくなってしまって、せめてお昼にあの場所に行こうと思ったんですけど、忙しくてなかなか行けず…」


トクトクと胸が音を立てる。


そんな理由だったなんて。

私のことを、約束を、気にしてくれてたなんて。


「…よかったです」

ポロッと口から溢れた言葉。

「え?」

「空さんに、また会えてよかったです」


まっすぐそう伝えたら、空さんは僕もです、と微笑んだ。