爽やかな空に恋しました

数日後。

今日もお昼休みに、スカイ・バルのお客さんの列に並びながら、うーんと考える。


どう見ても列に並ぶ女性の割合が高い。


チラッと接客中の空さんを見る。

私に向けてくれる笑顔と至って変わらない気がしちゃう。

なんて悩んでるうちに、私の番がやってきてしまった。


「こんにちは」

「あ、優花さん。こんにちは」

名前を呼ばれて、ドキッとする。

ちゃんと覚えててくれてることが純粋に嬉しい。


「また来ちゃいました」

「いつもありがとうございます」


注文して、料理の準備をする空さんを眺める。

何か話題…ないかな。


「今日、ちょっと暑いですね」

口から出たのは、困った時によくする、天気の話。


「そうですね〜、もう夏来そうなくらいですよね」

「もう少し春を楽しみたいです」


あーどうしよう。
これじゃその他大勢になっちゃう!


心の中で焦ってると、


「あ、もしかして、暑いから今日は髪結んでるんですか?」

「え?」

「いつも下ろしてますよね」

髪の毛、と空さんは自分の頭を指差した。



うそ。
そんなことまで気づいてくれてるの。



「あ…これはちょっと気分転換に。たまには結ぼうかなーって」

「その髪型もいいですね、雰囲気変わって」

「えっ、ほんとですか?」

「はい。似合ってます」


不意の褒め言葉。


そんなこと…
他のお客さんには言わないでほしい。

私だけって思いたい。


だって、髪型の変化に気づいてくれて、似合ってるって言ってくれて。

そんなの、好きになるよ。


「はい、お待たせしました」

「あ、ありがとうございます」


その他大勢から、抜け出したい。



「空さん」

「はい」

「今度……ご飯に行きませんか」

「え?」


空さんの、いつも優しい瞳が大きく見開かれた。


ドキドキする胸を押さえながら、空さんの返事を待つ。

すると少しの間の後、


「ぜひ。行きましょう」

「っ、ありがとうございます!」


やった!

ガッツポーズして飛び跳ねたいくらい嬉しい。



「すみません、注文いいですか」

振り返ると、後ろのサラリーマンが様子を伺ってる。


「あっすみません…!」

会話聞かれてたかな。恥ずかしい。


「あのじゃあ、詳細はまた今度にでも!」

「はい、また」

空さんがニコッと微笑む。

私は気持ちが高揚するのを感じながら、その場を離れた。