君が笑ってくれたから

「知っているなら、何故話しかける?」

「もう、どうでもいいし…。」
 
華鈴が海夢に手を出そうとする。

「だめっ…!」
 
みんなが止めようとするが永茉は上手く動けない。
 
それに、あの2人は止められない…そんな気がした。

「お前ら、馬鹿か!」

「…!」
 
華鈴と海夢は少し離れて息を整えている。
 
そこに来たのは…

「恵…なんで居んだよ…!」

「…もう、止めないでよ!」

…恵だった。
 
そういえばずっと見てたのかな。

「恵…なんで来たの?」
 
永茉が言う前に華鈴が言った。
 
あれ、華鈴と恵はクラスが一緒になったことなく、話した事もないはずなのに…

「通りかかっただけだよ。」

「嘘だ…ちゃんと言ってよ…」
 
華鈴が初対面の人と話す時は、すぐ黙り込むのに…

「…永茉に聞いて」

「え…」
 
少しぼーっとしていてびっくりしてしまった。
 
恵は永茉に近ずき小声で言った。

「大丈夫だよ。言ってみな。」

「でも、なんて言えば…それと…」

「ん?」
 
華鈴との関係を聞こうとしたけど、ここで聞いたら変かな。

「言ってよ」

「華鈴と仲いいの?」

「あー。クラス違うかったしね。小学校の時塾が一緒で、俺さ、学校にも塾にもあんまり友達居なくてさ…」
 
永茉は静かに聞いた。
 
あの日恵が悩みを聞いてくれた時のように…。

「だから、友達がほしくて…。隣の席に華鈴が居て、話しかけてみたんだ。初めは黙り込んでたけど、話はちゃんと聞いてくれて…。全く笑わなかったんだよね。」
 
恵は懐かしむように苦笑いで話していた。

「でも、笑ってほしくて、馬鹿な話してみたら…笑ってくれたんだ…。その後から話すようになって、永茉の事たくさん話してくれたよ。」

 だから、悩んでる永茉に気づいたんだ。

「もう一度、華鈴の笑顔が見たくて…」

「永茉も…!」
 
一瞬驚いた顔をして、すぐに笑った。
 
その笑顔もいい…。

「よし、じゃあ話してこい!」

「わかった」
 

もう大丈夫、心の準備は整った…