策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


(夫婦になるのなら、朝起きて一番に「おはよう」って言うのも、一緒に食卓を囲むのも、眠る直前まで顔を見ているのも、全部が西澤さんなんだよね)

そう考えただけで胸が高鳴り、自分でも思っている以上に彼に心惹かれているのだと自覚した。

きっとこの機会を逃せば、一生結婚できない。そんな予感さえしている。

伊織ほどの男性ならば、望めばどんな女性とでも結婚できるだろう。それなのに千鶴にこの提案を持ちかけたのは、たまたま婚約者役を演じたのが自分だったからなのだろうか。

そう考えると納得できると同時に、気持ちの格差に胸が痛む。

彼にも結婚するメリットがあるとはいえ、千鶴でなければならない理由は見当たらない。

(伊織さんに、本気で好きな女性があらわれたらどうするつもりなんだろう?)

千鶴はおそるおそる尋ねた。