策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


助けてもらった千鶴はうっかりときめいてしまったが、彼は相変わらず頼りないと呆れているかもしれない。

(伊織さんが、結婚したい理由……?)

今日のレセプションの様子を思い出し、ひとつの可能性に行き当たった。

「もしかして、契約結婚というやつですか?」

そんなドラマのCMを見たことがある。たしか、恋愛感情は一切持ってない男女が互いのメリットのために婚姻関係を結ぶという謳い文句だった。

千鶴と結婚することで得られるものがあるのか疑わしいけれど、今夜伊織に娘を紹介しようとしていた男性や秋波を送っていた女性の多さを考えると、既婚者になるのはメリットと言えるのかもしれない。

千鶴が頭に浮かんだワードを口にすると、伊織は驚いた顔をしたあと「そうだった、君はそういう思考回路だった……」と苦い顔をした。

それからほんの少しの時間、指を顎に当ててなにか考え込むと、再び口を開く。