策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


ダニエルは大層日本食が気に入ったらしく、先日の食事の時間では聞ききれなかったことを熱心に質問された。それに対し淀みなく答えると、彼は満足そうに何度も頷きながら「料理や酒はもちろん、接客も日本食の一部なんだね。日本のおもてなしとは奥が深い」と嬉しい言葉を贈ってくれた。

「大使。実は先日言いそびれていたのですが、実は彼女は私の婚約者なのです」
「おお! そうだったのか!」

周囲には恋人っぽく振る舞っていただけだが、ダニエルやエリックには『婚約者』という立場を明確に伝えた。結婚を考えている相手がいるのだとエリックに知らしめなくてはならない。ここからが本番だ。

伊織も同じように考えたのか、彼は日本語を話せないエリックに聞かせるようにフランス語に切り替える。

『彼女とは半年前にフランスで運命的な出会いをしまして。ようやくプロポーズに頷いてもらえたんです。あ、彼女は照れ屋なので、フランス語でこっそり惚気けさせてください』

ダニエルは笑って祝福をしてくれた。その後の会話もフランス語なのでなにを話しているのかはわからないけれど、きっと先ほどまでのように盛りに盛った設定を聞かせているのだろう。