しかし彼は変わり者であり、どこかの企業に就職しているわけではない。そんなリュカを国家プロジェクトに呼び込みたいとするデジタル庁が目をつけたのが、彼と同級生であったエリックだ。
伊織はデジタル庁から依頼を受け、フランス大使に両国共同のプロジェクトを持ちかけ、エリックを通じてリュカとの接触を図った。
リュカは以前からAI教育に関する技術向上に興味を持っていたらしく、日夜研究に勤しんでいる。
「今日くらい出席しないかと声を掛けてみたんだが、やはり断られてしまったよ」
「表には出たくないと仰っていましたしね」
伊織との会話を横で静かに聞いていると、ダニエルの視線が千鶴に向けられた。姿勢を正し、にこやかにお辞儀をする。
「おや、君はたしかひだかの」
「はい。先日はお越し下さりありがとうございました。日高千鶴と申します」
「初めて会席料理を食べたが、本当においしかったよ! とくに刺身と日本酒のマリアージュが素晴らしかった」
実家の店を褒められ、千鶴は心からの笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。大使が褒めてくださったため、両親も大変よろこんでおりました」



