策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


今日のような場をきっかけに伊織とお近づきになりたいと願っていた女性も多いようで、彼の隣に立つ千鶴に対し、ジロジロと値踏みするような視線を向けられているのは会場に入った時からひしひしと感じていた。

千鶴はパリで出会ってからずっと忘れられず、伊織に惹かれている。けれど、この会場でどれだけ親しげに振る舞ったところで自分たちは偽りの関係だ。エリックの関心を逸らすという大義名分を盾に、伊織を慕っている多くの女性の邪魔をしているようで胸が痛い。

引きつった笑顔で祝福を述べて去っていく者が多い中、「うちの娘の恵梨香と食事くらいどうかな」と強引に食い下がる男性がいた。

彼は嶋田と名乗り、私立大学で教鞭を執っているらしい。嶋田の後ろにいる女性が恵梨香という娘なのだろう。

「娘はとても優秀で、今回デジタル庁とフランス大使肝いりのプロジェクトメンバーの一員なんですよ」

嶋田は誇らしげに語り、それを聞いている恵梨香も艶然とした笑みを崩さない。パンツドレス姿が様になるスタイルのいい美人だったが、伊織はそれも「私は彼女しか目に入らないので」と一刀両断してしまう。

それを聞いていた周囲が「熱烈だな」「お幸せに」などと囃し立て、一気に千鶴と伊織の仲が周知の事実のようになっていく。

恵梨香から去り際に鬼のような形相で睨まれたのは、きっと気のせいではない。

本来の目的はエリックの関心を千鶴から逸らせることだけのはずが、なんだか大事になっているような気がして、別の意味でもドキドキしていた。