「おや? 大将のところの千鶴ちゃんじゃないか」
デジタル庁副大臣の高野もそのひとりで、祖父の代から通っている常連だ。世間では気難しい人だと言われているが、千鶴は昔から可愛がってもらっている。
「見違えたな。綺麗に着飾って、どこのお嬢さんかと思ったよ」
「高野様、ご無沙汰しております」
千鶴が挨拶を返すと、隣の伊織も「外務省の西澤と申します」と頭を下げた。
「あぁ、君か。共同研究プロジェクトの仲介役をしてくれたのは。その節は世話になったな」
「いえ。順調に進んでいるようでなによりです」
AI教育の推進を図るデジタル庁と、フランスをAI大国に押し上げたいダニエルを引き合わせたのが伊織だったらしい。
「ところで、高野副大臣もひだかを懇意にされていらっしゃるんですね」
「あそこの料理と酒はこの辺りじゃ一番美味い。それに、女将や千鶴ちゃんの接客も押し付けがましくなくていい。しかし、まさかこんなところで千鶴ちゃんに会うとはな」
「慣れない場なので、すごく緊張してしまって」



