策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「我がフランスと日本を繋ぐひとりの天才、リュカ=小笠原が現れ、次世代のAI技術は格段に飛躍しようとしています。日本のデジタル庁や優秀な研究者のみなさんとともに、人工知能分野をリードする存在へと成長していきたいと思っています」

主催者であるダニエルの熱い開会の挨拶が済むと、会場内は一気に賑やかになった。

緊張気味で落ち着かない千鶴とは違い、伊織の態度は終始一貫している。名だたる大学の教授や研究員と挨拶を交わす間も、穏やかな笑みを崩さない。千鶴を相手に紹介する際には、本当に大切に想っているかのように愛しげに見つめてくるのだ。

「綺麗なお嬢さんだね」
「運命的な恋なんて素敵。ぜひ馴れ初めを聞きたいわ」

〝半年前に伊織がひと目惚れし、必死に口説いてようやく頷いてもらった〟という盛りに盛った設定を信じた周囲の人々から祝福の言葉をかけられる。

伊織がひと目惚れされる側ならともかく、逆だなんて誰もが不思議に感じるだろう。そんな不躾な視線を浴びせてくるような人間はいないが、いたたまれないことこの上ない。

中には『ひだか』に来たことのある政治家や官僚の姿もあり、千鶴を覚えている人もいた。