策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


伊織と半年ぶりの再会を果たした二日後。千鶴は彼とともに麻布にあるフランス大使館へやって来た。

立派な外壁に囲まれ、都心とは思えないほど緑豊かな敷地の奥にある真っ白な二階建ての建物がフランス大使公邸だ。

今夜はAIの発展や課題について研究している人たちの親睦会として開かれた催しで、日本とフランスの二国間で共同研究している機関で働く人々や大学教授などが集まっている。

また、今後AIを積極的に導入したいと考える企業のトップや、経済産業省やデジタル庁などからも数人が出席していると聞き、父や祖父くらいの年代の男性ばかりだと勝手に想像していた。しかしホールには意外にも千鶴と同年代くらいの人が多く見受けられるし、華やかな着物やドレスを纏った女性も少なくない。

変に目立つことはないだろうけれど、それでも庶民の自分がここにいる場違い感は拭えず、千鶴はそわそわと視線を彷徨わせた。

「もしかして緊張してる?」

千鶴に腕を貸している伊織が、こそっと小声で尋ねてくる。

ぎこちなさが漂う千鶴と違い、彼はパーティー仕様の光沢のあるスーツを着こなし、サイドの髪をカッチリとまとめている。この場に馴染んでいるだけでなく、華やかな会場中でも目を惹く存在感だ。