策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


自分の恋愛観が世間や周囲の友人たちとかけ離れたものだと理解している。

けれど、親友や母のような〝生涯その人だけ〟と思える人と出会い、素敵な恋愛を経て結婚したい。その考えは大人になっても全く変わらないままだ。

初めて愛した人に愛され、ずっと隣にいられたらどれほど幸せだろう。まるで幼い子供が白馬に乗った王子様を待ち焦がれるように、千鶴もたったひとりの男性との出会いを望んでいた。

最近では仕事が楽しくて恋を探すのは二の次になり、とうとうこの年まで彼氏ナシできてしまったが、去年兄夫婦に子供が生まれたのをきっかけに、千鶴も色々と考え始めたところだ。

「甥っ子がめちゃくちゃ可愛いんですよ。私も結婚して子供がほしいなって、最近強く思うようになったんです。とはいえ、なかなかお相手が見つからないままなんですけどね」

よちよち歩きの甥っ子を思い出すと、自然と頬が緩む。

自分も子供を持ちたいと望むなら、年齢を考えるとあまりのんびりはしていられない。友人から誘われる合コンや、マッチングアプリで出会いを探してみるべきかと悩んでいるところだ。

そう話を締めてふと視線を上げると、伊織が思いもよらぬほど真剣な表情でこちらを見つめていた。