(あまり似合ってないから、言葉を探してるとか? それとも、やっぱりさっきの話が聞こえてた……?)
奈津子にすべて任せてスタイリングしてもらったためおかしな部分はないはずだけれど、それでも少し不安になる。
「あ、あの……」
「いや、悪い。想像以上に綺麗だ」
初めて聞く低く甘い声に、全身にゾクリと痺れが走った。
先ほど奈津子に恋人同士と間違われたせいか変に意識してしまい、ドキドキと鼓動が落ち着かない。
「ありがとうございます」
千鶴はぺこりと頭を下げた。本来なら伊織のフォーマルな装いにも言及するべきだろうが、あまりの気恥ずかしさに俯いたまま顔を上げられない。彼の熱っぽい視線が、千鶴から一切動かないせいだ。
「私の店をむず痒い空気にしないでちょうだい。ほらほら、早く食事に行ってらっしゃいな」
「ありがとう、お祖母様」
奈津子に向かってそう言うと、伊織は千鶴に手を差し出した。きっとこういう時はエスコートするものなのだろう。



