奈津子が茶目っ気たっぷりに微笑んだのを見て、伊織は祖母の血を色濃く継いでいるのだと感じた。彼女も伊織と同じく笑顔がとても素敵で、こちらまで幸せな気持ちにさせられる。
「初めまして。日高千鶴と申します」
千鶴は笑顔で腰を折る。とはいえ、ここが伊織の祖母の店だとは初耳で、内心ではとても緊張していた。
(西澤さん、私に似合うドレスを見立ててほしいって言った……?)
わけがわからず伊織を見上げると、奈津子が嬉しそうに口を開く。
「まぁ、可愛らしいお嬢さんで腕が鳴るわね。どこへ行くの?」
「あまりかしこまるのもどうかと思って、『マテリエル』にしようかと」
「わかったわ、任せてちょうだい。伊織もこれから支度するのでしょう? 1時間くらいでいいかしら」
「お願いします」
ふたりのやり取りに口を挟めないまま、なにかが決定したらしい。
「あの、どういうことですか?」
「さっき言ったろ? フレンチを食べに行こうって。せっかくだから思いっきりオシャレしてパリの夜を楽しもう」
「オシャレしてって、まさか……」



